「飛行機に医者がいる」確率、「初恋の人と結婚する」確率は? 数字から学ぶ賢く生きるヒント

暮らし

更新日:2022/7/19

世の中は奇跡であふれている 前向きになれる確率の話
世の中は奇跡であふれている 前向きになれる確率の話』(鳥越規央/WAVE出版)

 交通事故や、詐欺、殺人事件などを伝えるメディアの報道は、私たちを不安にする。リスクにあふれた今の時代に、だまされたり、犯罪に巻き込まれたりすることを恐れて、積極的な行動を控える人もいるだろう。しかし、そんな心配を解消する考え方を「確率」というアプローチで伝えるのが、『世の中は奇跡であふれている 前向きになれる確率の話』(鳥越規央/WAVE出版)だ。

 本書は、テレビ出演やコラム執筆でも活躍する統計学者の鳥越規央氏が、さまざまな出来事が起こる「確率」を伝える本。それぞれのトピックが、ゆるいイラストと確率の根拠や考察をまとめたコラムのセットで、ひと見開きにまとめられている。目次を開き、7つの章で分類された項目から気になる確率をピックアップして読むのも良いだろう。

世の中は奇跡であふれている 前向きになれる確率の話 P92

 事故や犯罪のリスクが怖いという人は、4章の「不安がやわらぐ確率」がおすすめだ。たとえば、未だに怖がる人も多い「飛行機事故で死ぬ確率」は0.0009%と、イメージができないほど低い。「犯罪にあう確率」も0.452%で、犯罪の数も年々大幅に減っているという。また、日本人が80歳までの間に自動車がらみの交通事故にあう確率は、13.8%。この数字をどう感じるかは人それぞれだが、筆者は、10人に1人以上が交通事故を経験すると知り、楽観視するというより「気を付けないといけないな」と感じた。確率という客観的数字を知れば、メディアで報じられるような事故や事件を必要以上に恐れずに、冷静に毎日を過ごせそうだ。

advertisement

「動物や虫に襲われて死ぬ確率」も、想像以上に低い。世界でもっとも人間の命を奪っているのは、感染症を媒介することで知られる蚊で、1年間に蚊に刺されて亡くなった人は世界人口のうち0.0119%だそうだ。しかし、人の命を奪う生き物の第2位は、なんと人間。サメやクマより、身近な存在のほうが警戒すべきだという示唆が興味深くもあり、考えさせられる。

世の中は奇跡であふれている 前向きになれる確率の話 P124

 また6章では、「初恋の人と結婚する確率」や「マッチングアプリを通じて結婚する確率」など、結婚や仕事などの生き方にまつわる確率が並ぶ。たとえば、2020年に結婚した人の16.5%は、婚活サービスを利用してのゴールイン。その中でも11.1%がマッチングアプリを利用していたという。婚活サービス利用者のうち49.9%が結婚に至るという確率は、過去最高を記録したそうだ。これらの数字は、出会いや転職など、人生の転機で迷っている人を後押ししてくれるだろう。そのほか、「女性アイドルと付き合える確率」「女子アナと付き合える確率」など、知ったからといって何か変わるわけでもないが、味わい深い確率も並んでいて、楽しく読める。

世の中は奇跡であふれている 前向きになれる確率の話 P144

 確率の数字だけでも面白いが、本書の特徴は、その確率から読み取れる考察を著者が丁寧に伝えていることだ。犯罪は減っているからこそ、事件はメディアで大きく取り上げられると知ること。ニュースで報じられる「1日何千人」といった数字だけでなく、「年々数が減っている」といった長期スパンでの数の変動や、物事が起きる確率にも目を向けるべきだと気付く。ためになる数字から豆知識まで、硬軟幅広い確率に触れることで、賢く生きるヒントを得られる1冊だ。

文=川辺美希 イラスト=菅幸子(さすが)

あわせて読みたい