ヒロインが「この犬っ!」と呼ぶ相手は本当に犬だった

更新日:2012/11/26

犬とハサミは使いよう

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:更伊俊介 価格:463円

※最新の価格はストアでご確認ください。

この作品、『犬とハサミは使いよう』は第12回えんため大賞の優秀賞作品だそうですよ。さもありなん。といった感じです。昨今のライトノベルに必要な「楽しそう」な雰囲気と「ネタ満載の会話」などなど要点をちゃんと押さえてるんです。

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じゃあ、その辺だけ押さえておけば誰でも書けるのか? といえば、それは無理です。コンペで入選する作品というのは、なにかとんがっています。そりゃ、矛盾じゃないか?といわれればまったくその通りでして。でもそんな狭き門を偶然ではなく、ちゃんとした計算で通した感のある作品でした。

まず、主人公が本好き、あるいは本そのものが作品のテーマにもなっているようなもの、というと「R.O.D.」シリーズであるとか、ちょっと前だと『文学少女シリーズ』なんかが成功例としてあるわけですよ。そのあたりをちゃんと意識しているんだろうなぁ。

プロローグではこの作品世界での本の価値が、(やや古典的な形ですが)神視点で提示されます。「ゼロの使い魔」なんかのいきなり異世界に行く展開に比べると地味です。しかし読者に対する、「あの流れのやつですよ」というメッセージになり、読者を作品のモードに誘うことに成功している。

でも主人公は犬。
というか、冒頭でいきなり死んでしまって犬に転生する。ここがポイントだと読みました。本を愛する、人間だったときの意識を持った犬。もしこれが、別の人間に生まれ変わっただとか、誰かの体に憑依したとかそんな感じだったら、どうなっていたかわからないなと思う。

だって、よくわからないまま女の子と同居することになって、一緒に事件を解決するなんて定石もいいところでしょう。突然犬になってしまったからこそ、「どうなるんだろう?」という期待が生まれるし、ヒロインとの会話もひと味違ったものになっているんだろうと思いましたよ。


プロローグ前のイラストで「つかみ」はしっかりと

突然挿入される用語説明。でも、これはちゃんと本編とリンクしているのだ

二次元ヨメじゃなくて、活字ヨメ!?

いわゆる「この駄立体がっ!」というやつですね