「近くで作られたものを食べる」――毎日の買い物で、暮らし方で世界は変わる! 10歳の小学生が発信する、家族みんなで学べる環境問題

文芸・カルチャー

公開日:2022/10/6

地球をまもるってどんなこと? 小学生のわたしたちにできること
地球をまもるってどんなこと? 小学生のわたしたちにできること』(ジョージ Y ハリソン:作、たかしまてつを:絵、日本科学未来館(遠藤幸子・池辺靖):監修/KADOKAWA)

 環境破壊など地球が抱える問題は、モノや食べ物に満ち足りた便利な生活をしているとなかなか意識しにくい。持続可能な世界を目指すことが必要とは知りつつも、世界の遠いどこかで起きている問題に対して、自分は何もできないと感じている人も多いだろう。

 本書『地球をまもるってどんなこと? 小学生のわたしたちにできること』(ジョージ Y ハリソン:作、たかしまてつを:絵、日本科学未来館(遠藤幸子・池辺靖):監修/KADOKAWA)は、10歳の小学生が、世界をよりよくするために実践している12のことを紹介する絵本。同年代に向けて書かれた書籍だが、世界に関心を持ち始めた子どもだけでなく、世界の問題を自分ごと化できない大人がその本質を知り、行動を変えることができる1冊だ。

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地球をまもるってどんなこと? 小学生のわたしたちにできること

 著者のジョージ Y ハリソンさんは、ロンドンと東京育ちの10歳。6歳のとき、国連食糧農業機関のローマ本部を訪問して環境問題に関心を持って以来、環境保全や、国際会議への参加などの活動を行っている。また、幸本澄樹として、NHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』にヒロインの初恋相手として出演し、俳優としても活躍。持ち前の発信力と、幅広い活動で得た豊富な知識を生かしつつ、同年代にわかりやすい言葉で、子どもが地球のためにできることは何かを伝えている。

地球をまもるってどんなこと? 小学生のわたしたちにできること

「できること」のひとつひとつは、その背景にある問題と著者が考える解決策を交えて紹介されている。たとえば、「近くで作られたものを食べる」というテーマでは、食材の輸入によって生じる環境への負荷を示す指標「フード・マイレージ」について説明。遠くで作られた食材を食べることが燃料の消費や二酸化炭素排出につながることについて、「近くで作られたやさいやくだものなら、しんせんなうちにおいしく食べられます。つかうねんりょうもへらせたら、地球にもやさしいですよね」と伝える。子どもが、自分の暮らしと地球のつながりを理解できるため、買い物や食事のときに話題にすれば、親子での学びが進みそうだ。

 具体的な数字を交えた解説も、問題への理解をより深める。たとえば、「海をまもるためにできることを考える」のページでは、人は、海産物などの食べ物を通して、1週間で平均5グラム=1円玉5個分のプラスチックを体に取り込むと言われていることを紹介。ゴミを海や川へ捨てないことや、ゴミの分別、プラスチックの使用を減らすことの大切さを、子どもが体感的に知ることができるだろう。

地球をまもるってどんなこと? 小学生のわたしたちにできること

 環境問題に関する子ども向けの本は多いが、読み手によっては、教科書のように感じて手に取りにくいものもあるかもしれない。しかし本書は、環境問題そのものから出発するのではなく、「自分ができること」にフォーカスしているため、読者が自分自身に引き付けて読むことができる。また、本書でも地球上の深刻な問題を伝えてはいるものの、みんなで世界は変えられるという著者の思いが通底しているため、ポジティブに環境問題に向き合える。

 そして何より本書が画期的なのが、読者と同じ世代の10歳の少年が発信していること。友達との会話のように読めるため、環境問題を、手の届かない大きなテーマではなく、生活の中でフラットな意識で取り組めるものと受け取ることができる。12の行動の中から、特に気になったテーマについて、親子で掘り下げていくのも良いだろう。家族みんなで楽しみながら学べる1冊だ。

文=川辺美希

■書誌情報
『地球をまもるってどんなこと? 小学生のわたしたちにできること』(KADOKAWA)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322112001243/

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