【池上彰監修】子どもたちの思考力を特訓!「正解のない問題」だらけの世の中を生き抜くための問題集

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公開日:2022/12/9

正解のない問題集 道徳編
正解のない問題集 道徳編』(池上彰:監修/Gakken)

 世の中の「大多数が言うこと」はそれだけで正解に思えてしまうこともあるが、そう割り切れる問題ばかりではない。社会問題、人間関係、親子関係……本当は“自分の目の前にある問題の答え”は自分の内にしかないはずだ。子どもたちには、どんな問題に直面してもしっかりと自分の意見を言えるようになってほしい。学校のテストで出題されるのは正解がある問題ばかりだが、世の中は「正解のない問題」で溢れている。そんな問題と向き合えるようになるためにも、自分の意見を持ち、その意見をもとにして、周囲の人たちと話し合える大人になってほしい。

 だが、そういう力を身につけるためには一体どうすればいいのだろう。もし、そう悩んでいるならば、子どもたちと一緒に、池上彰さん監修の『正解のない問題集 道徳編』(池上彰:監修/Gakken)を読んでみてはいかがだろうか。この本では、「年下は年上を敬うべき?」「学歴社会はいい社会?」「多数決は正しい?」など、大人でも解答に悩むような30の「正解のない問題」が用意されている。身近な問題から、社会全体に関わる大きな問題まで、世の中にはこんなにもたくさんの「正解のない問題」があるのかと、もしかしたら子どもたちは驚くかもしれない。そして、それぞれの問いに対して考えを巡らせていけば、「自分なりの正解」を導き出すトレーニングになるはずだ。

 この本は、8人の宇宙人が地球で「正解のない問題」を見聞きするというストーリーで進められていく。宇宙人は個性豊か。正義感が強い人や論理的な人、大胆な発想をする人や優柔不断になりがちな人、反対意見を言うのが苦手な人…。そんな宇宙人たちの姿に、つい身近な友だちの姿を重ねてしまう人もいるに違いない。

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正解のない問題集 道徳編 p.8-9

 また、扱われる問題も身近にありそうな事例ばかりで、自分事に感じられる。たとえば、「やさしい嘘」という項目では、家に遊びに来た友だちが間違って高価な花びんを割ってしまったという場面設定が紹介される。泣いて謝る友だちがかわいそうで、買い物から帰ってきた親に思わず「愛猫がこわした」と嘘をついた男の子。果たしてその対応は正しいのか。ついてもいい嘘はあるのか。そんな問いに対して、宇宙人たちが議論を重ねていく。

正解のない問題集 道徳編 p.29

正解のない問題集 道徳編 p.30-31

「わざとではないから、嘘をついてもいい」という意見があれば、「結果として悪いことをしたのであれば、嘘をつくのはダメ」という意見もあるし、「人を守るための嘘はあるかもしれないけど、それで他の人が傷つかないように注意したい」との意見も。宇宙人たちのさまざまな意見は、どれが正解で、どれが間違っているというわけではない。どの意見も説得力があり、どの意見も正しい。人が変われば正解だと思うところも変わっていく。その議論を眺めているうちに他者の意見に共感し尊重するという真の多様性が理解でき、「自分なりの正解」に辿りつける。そして、考えることの楽しさにも気づけるだろう。

 個性豊かな宇宙人たちが議論するさまは、「正解のない問題」に挑む実社会の大人たちとよく似ている。あらゆる人がいる社会の中で、それぞれが思う「正解」を語り合い、話し合いを重ねては、その落としどころを探っていく。この本はまさにその過程を疑似体験できる1冊。多様性豊かなこれからの時代を生きていく子どもたちの力になるに違いないこの本を、あなたも手にとってみてはいかがだろうか。

文=アサトーミナミ

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