北朝鮮のミサイル発射、中国が狙う尖閣諸島…「地政学」で解き明かす日本を中心とした世界情勢

社会

更新日:2023/7/7

90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学
90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』(いつかやる社長/飛鳥新社)

 周辺国との緊張が高まる昨今。世界情勢に関心を抱く人たちは、少なくないだろう。ニュースの内容をより深く知りたい、そう考える人たちに役立つ本が『90枚のイラストで世界がわかる はじめての地政学』(いつかやる社長/飛鳥新社)だ。

 戦争を主な研究対象とした地政学をテーマに、簡潔に分かりやすく世界情勢を学べる1冊。著者は、人気YouTuberのいつかやる社長だ。学問の研究対象は戦争であるが、その目的は「戦争をしないために、『そもそもなぜ戦争が起こるのか?』」を解き明かし、平和な世界とは何かを考えることにある。平和への願いもにじむ本書より、日本に関する項目をピックアップして紹介する。

北朝鮮のミサイル発射。その目的は?

 日本と周辺国との関係。なかでも、気になるのは相次ぐミサイルの発射で揺れる北朝鮮との関係だ。彼らはなぜ、日本の海域に向けてミサイルを撃ち続けるのか。本書ではその理由を「アメリカへのアピール」だと解説する。

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 北朝鮮はかねて「とても貧乏で、貧しい地域では餓死してしまう人が出るほどの食糧難」に悩まされているという。そのため、アメリカに対して「自分たちを危険な国」と思わせ、「経済支援」を受けるための「交渉の場」に引き出そうとしているのが、彼らがミサイルを撃つ理由だと本書は見解を示す。

 では、その理由が事実だとして、日本への脅威が止むことはあるのか。問題の核にあるアメリカからの経済支援について、今後行われる可能性は「十分にある」という。ここで関係するのが地政学で、北朝鮮を「味方」にできれば、アメリカは「最大のライバルの中国」に対してのけん制を図れる。両国の関係もまた、日本の平和維持に関連しているのだ。

中国が尖閣諸島を狙う理由は?

 アメリカがけん制を図る「中国」との関係も、日本にとっては無視できない。国家間では、「尖閣諸島」を巡る領土問題による対立が続いている。

 中国はなぜ、尖閣諸島を狙うのか。理由の1つは、資源だという。尖閣諸島周辺には「食料になる魚や、海底にはエネルギーになる石油、レアメタルと呼ばれる貴重な鉱物が豊富に眠っている」と言われている。それほどの「宝の山」の利権を得ようとしているのが、中国の思惑だと本書は解説する。

 また、もう1つの理由は「中国が海に出るための基地にできること」だそう。現在、中国は「太平洋に軍隊を送り、太平洋の半分を支配すること」を目標にしているという。そのため、「中国本土からの補給や軍隊を置いておく場所」として、尖閣諸島を支配し、人工島等で拡張して拠点にしようと目論んでいるというのだ。

日本のミサイル防衛の成功率は…?

 ロシアによるウクライナへの侵攻で、日本でも“有事が起きたら…”と不安に駆られた人たちも少なくないはずだ。各国の関係を解き明かす本書は、現代や未来の「戦争」にまつわるテクノロジーも解説する。

 先述の北朝鮮との問題に関する議論として、日本の「ミサイル防衛」の実力が議論されることもある。そもそもミサイル防衛とは「落下してくるミサイルに、別のミサイルをぶつけて破壊する」という防衛手段だが、本書では、日本は「優秀」としながらも「成功率は80%未満。つまり10発撃たれたら、2発は落ちることになる」と見解を示す。

 ミサイルの技術は進化しており、1発で複数の場所を攻撃可能な「多弾頭ミサイル」や、マッハ5以上の速度で、複雑な軌道を描くため撃墜が困難な「極超音速ミサイル」、ひいては「ミサイルを撃ち落とすためのレーザー兵器」も作られているという。まるでSFの世界だが、現代では「サイバー攻撃」のように遠隔から相手国を攻撃する手段もあり、戦争の形はますます変わりつつある。

 日本にとってもけっして“対岸の火事”ではない戦争について、地政学をテーマに見識を深められる本書。各国の特徴になぞらえた、動物たちのイラストも親しみやすく、一気に読み進めたくなる1冊である。

文=カネコシュウヘイ

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