何度も読み返したくなるnot simpleな1冊完結コミック

オノ・ナツメ

2012/12/15

not simple

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:オノ・ナツメ 価格:540円

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1冊で完結する本が自分にとってのベストタイトルになることがあります。ちょっとした時間を使って何度も読み返せるし、内容がぎゅっと凝縮されていて濃い。ときにはそんな1冊を探してみるのもいいなと、電子書店を巡って見つけたのが、鋭いコミックファンにカルト的人気を誇るオノ・ナツメの『not simple』。シンプルな動機で最高の出会いができました。

「人生ってなんだろう?」「幸せって? 不幸って?」
そんなことを考えさせられる、ちょっと哲学チックな作品。

主人公のイアン青年は、決して恵まれたとはいえない人生を送ってきました。彼の人生は、シンプルに表現すれば「ツキがない」。そんなイアンが、「お前の人生はすごい。お前の事を小説にする。」とひとりの男にいわれるところから物語は始まります。縦横無尽に張り巡らされた伏線、意外なところでつながる人間関係、そしてハッとさせられる物語構成。きっと残酷で気持ちが暗くなる話のはずなのに、無駄を排除してエッジの効いた背景と、デフォルメされたシンボリックなキャラクターの絵柄が、まったくジメっぽさを感じさせません。虚無感すら漂ってもおかしくない人生なのに、イアンの淡々としたノーテンキさったら…! 生き方がシンプルすぎる。

私たちが生きる世知辛い現代。複雑な時代だからこそ、「シンプル」という価値観がひときわ目を引きます。かのスティーブ・ジョブズも信奉した「シンプル」という哲学。アップルの製品は、シンプルで直感的なデザインが代名詞となっています。教育環境においてもシンプルさが重視されることは多々あり、例えば学習机では、「勉強に集中しやすい」「かえって機能的」「子どもの成長に合わせてカスタマイズしていきやすい」という理由などで、シンプルなデザインが人気を集めていたりするのです。

“not simple”だらけの中でこそ価値を発揮する“simpleさ”。簡単なようで難解かつ深いテーマを扱うこの1冊だからこそ、電子書籍でいつでも手元においてもらいたいと思います。


「お前の人生はすごい。お前の事を小説にする。」 ひとりの男のセリフから振り返っていく、イアンの半生

舞台はアメリカ。絵柄もセリフも、エッジが効いています

脇腹を刺されたイアン。どうなるのか
(C)オノ・ナツメ/小学館