がんばりすぎておかしな敬語に…。ふたつのコツで苦手意識がなくなる敬語の使い方

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公開日:2023/3/6

がんばらない敬語 相手をイラッとさせない話し方のコツ
がんばらない敬語 相手をイラッとさせない話し方のコツ』(宮本ゆみ子/日経BP 日本経済新聞出版)

 社会人なら当たり前に使っている敬語。しかし、上司と取引先の人が一緒にいる空間、どんな言葉遣いをすればいいのか混乱して「それはご存じありません」というヘンな敬語を使ってしまった……なんて失敗をしてしまったことはないだろうか。敬語は勉強しないと使いこなせないのでは? そんなふうに思ってしまう。

 実は敬語は、がんばらなくてもいい。知っているだけでラクになる、ちょっとしたコツがある。それを教えてくれるのが『がんばらない敬語 相手をイラッとさせない話し方のコツ』(宮本ゆみ子/日経BP 日本経済新聞出版)。用語や文法の勉強とはちょっと違う、敬語をがんばらないコツをふたつ紹介しよう。


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がんばらないコツ1:「敬語は上下を示すもの」を忘れよう

 敬語は上下関係を表すもの。こんなイメージを持っていないだろうか。このイメージを捨てることが、ひとつ目のコツだ。「あの人は、この人より偉い」と上下で敬語を使うべき相手を選ぶことが混乱の元になっている。

 敬語は、「相手との距離を表すもの」と考える。実はその方が使い分けがしやすいのだという。例えば、普段きっちりとした敬語で話している上司や先輩、あるいは取引先の人でも、心理的に距離が近く親しみを感じていれば、多少くだけた表現を交えてやりとりをすることもある。

 逆に電車で乗り合わせただけの人に、「ねえ。この電車、新宿止まる?」と話しかけられたら、少し驚いてしまうはずだ。私たちは日頃から、自然と敬語を「距離を示すもの」として使っているのである。

 どんな敬語が必要かを判断するには、上下ではなく「内側か外側か」を考えると良い。内側は「身内」。言うなれば普段着のイメージ、カジュアルが許される雰囲気だ。対して外側は、「社会」でよそ行きの服。初対面の人とのやりとりや、あらたまった場をイメージする。この感覚があると、立場が違う人が複数同席していても「上司は、立場は上だけど同じ会社だから内側。取引先は会社の外側の人」と、判断しやすいのでオススメだ。

がんばらないコツ2:難しい言い回しを無理して使わない

 敬語に自信がない人は、言葉遣いで相手を不快にさせまいと考える人だ。そんな人がつい犯してしまうミスが、聞いたことのある敬語っぽい言葉をそのまま使ってしまうこと。このミスを防ぐ、敬語をがんばらないコツのふたつ目は、無理に難しい言い方をしないことだ。

 例えば、何か聞かれたが答えを知らなかったときに、「ご存じありません」と返してしまったというケース。「ご存じ」は「知る」の尊敬語だ。尊敬語とは相手を立てるための敬語で、自分に対しては使わない。また、「田中様であらせられますか?」と過剰な敬語を使ってしまうケースもある。「あらせられる」は「ある」の尊敬語だが、皇族などきわめて高い敬意を表す場合にしか使わない言葉だ。

 敬語は、誰を立てるかで表現が変わるため、難しく感じる。正しく使わないと、失礼になってしまうのだ。がんばったのに間違えて不快な思いをさせるなら、いっそ使わない勇気を持とう。「それは分かりません。申し訳ありません」「田中様ですね」と、簡単な言葉でも「です」「ます」といった丁寧語を使えば、変な間違いをせず、印象も良い。

 あまり知らない敬語を使いたくなってしまうのは、間違っていたとしても丁寧な感じがして安心するから。つまり、自分が満足するための敬語になってしまっている。敬語に必要なのは、相手を「敬う」心。簡単な言葉であっても心を込めて発すれば、お互い心地良くいられる。

 本書には、そんな敬語の心構えだけでなく、間違いやすい敬語と適切な言葉の一覧表や、文法の説明も掲載されている。巻末には練習問題もあるので、実践的な対策もバッチリ。辞書のように、手元に置いていつでもチェックできるようにしておくと安心な一冊だ。

文=冴島友貴

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