25年間、四季報の全ページを毎号読破する著者が指南! 「ぶり」「新」など8つの注目ワードで、10倍株の転換点を見つけよう

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更新日:2023/3/10

10倍株の転換点を見つける最強の指標ノート
10倍株の転換点を見つける最強の指標ノート』(渡部清ニ/KADOKAWA)

 渡部清二氏は「投資のプロ」。野村證券で個人投資家向け資産コンサルティングや、機関投資家向けの日本株セールスに長年携わったのち、現在は「複眼経済塾」という投資アカデミーを主宰している。アカデミーの特色は、「株式投資の方法として、誰でも手に入れられる(会社)四季報と日経新聞を使っていること」。基本的には、この2つのみを投資の武器とすることを推奨しており、それはほかの投資塾にはない、「複眼」の大きな強みになっているという。

 こうした運営のあり方には、渡部氏のこれまでの経験が大きく作用している。渡部氏は野村證券時代、先輩に薦められて「四季報読破」「日経新聞の切り抜き」「指標ノートづくり」を行うようになった。25年にわたり、四季報の全ページを毎号読破し、日経新聞で気になった記事を切り抜くことに加え、日経新聞から日経平均株価終値やTOPIXの終値などの11項目の数値を記録し、それに対する簡単なコメントをつける「指標ノート」の作成も続けている。渡部氏による『10倍株の転換点を見つける最強の指標ノート』(KADOKAWA)は、そうした「指標ノート」づくりのノウハウを詳らかに解説する一冊だ。

「指標ノート」から得られるものは、単に個別の企業や経済に関連した知識のみに留まらない。大きいのは、「物事を多面的に見る」姿勢だ。株の動向を見る上では、国内・海外の時事問題にも目を光らせることが求められるが、一つの記事のみではなく、複数の記事を入念に比較して見ていくことで、ものごとの変化やその背景にあるもの、また一見ばらばらに見える出来事の因果関係を察知することが可能となる(変化や転換点を察知するうえでは、「ぶり」「年」「新」などの8つのキーワードに着目すべきだというヒントはぜひ覚えよう)。

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「ぶり」「年」「新」などの8つのキーワードに着目すべき

 たとえば、2022年2月17日の「中国冬季スポーツ『3億人計画』」という記事では、2025年までに中国政府が国内の冬季スポーツ人口を3億人、1兆元(約18兆円)規模の市場に発展させる目標を掲げていると報じられていたが、渡部氏はこの記事に複数の記事を重ねることで、はじめて読み取れる事実を提示する。同年3月1日の「中国『高所得国』入り目前」という記事でわかる、中国は高所得になったとはいえ、まだ世界銀行が定めている「高所得国」の基準に達していないこと、4月1日の「中国離婚件数43%減」でわかる、中国では離婚後の暮らしや子どもの将来への不安が離婚減の要因とみなされていることを挙げ、中国はまだ、冬季スポーツをできるほど一般的な家庭が豊かになっていないことが読み取れると語る。

 また、因果関係を考える上で、渡部氏は「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉を提示する。一見結びつきそうもない要素が最終的に結びつくという格言だが、たとえば、JR東日本の終電繰り上げから、食料品の販売事業・卸売事業を行う「カクヤスグループ」の株価上昇を予測する。順序としては、「JR東日本終電繰り上げ→生活スタイルの変化→コンビニの24時間営業がなくなる可能性→超高齢社会の進行→買い物に行けない高齢者の増加→昔の酒屋さんの御用聞き文化の復活→お酒を中心とした流通のインフラ構築をしている企業→カクヤスグループの発展、株価上昇……」という形で上記の予測が成り立つことを挙げ、こうした「連想する力」が重要であると語る。

「有望銘柄の見つけ方」などの直接的な教えも役立つ一方で、投資に留まらない、ものごとを長く広い視野で見つめるヒントも内包された一冊だ。

文=若林良

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