他人の評価が気になる、他人と比べると苦しい…。紀元前から伝わる孔子の教えが、令和の悩める私たちの道しるべに

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公開日:2023/3/14

今すぐ使える!やさしい「論語」
今すぐ使える!やさしい「論語」』(境野勝悟/三笠書房)

 先人たちの知見は、現代を生きる私たちの指針となる。孔子の『論語』もそのひとつだ。かつて学生時代には、漢文の授業で「難しい」と思っていたが、大人になってから学ぶと現代にも通じるし、迷ったときの道しるべになると気がつく。

 今や40歳を控えた筆者が20代の頃にふと読んだのが『論語』の解説書『今すぐ使える!やさしい「論語」』(境野勝悟/三笠書房)だった。今なお、人生に迷ったときにめくりたくなる。誰もが抱えうる悩みに、孔子がどんな答えを示していたのか。その答えを丁寧に解説する本書から、令和の時代でも心得ておきたい項目を紹介していこう。


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「他人の評価」を気にし過ぎるなら、「楽しみ」を作る

 現代は、SNSのフォロワー数や「いいね!」数に振り回されがちだ。紀元前に生きていた孔子の時代には、もちろんSNSなどなかった。それでも孔子は「他人の評価」に関する言葉を残していた。

 本書で紹介しているのは「楽しみて以て憂いを忘る」という孔子の言葉だ。他人の評価に振り回されるのは人の目を受け流すことができず、悩みがたまるから。しかし、悩みをなくすには難しい修行は必要なく、生活の中で他に「少しでも多く楽しむときをつくれば、憂いはなくなる」と孔子は説いている。

 目先の評価だけにとらわれず、もっと視野を広げれば別の場所で自分を認めてくれる人と出会えるかもしれない。孔子の言葉は、その可能性に気づかせてくれる。

孔子「最高の弟子」が教えるマイペースの大事さ

 他人の生活をSNSで簡単に見られるようになった。しかし、同世代や同じ立場の人たちがキラキラした生活をしている(ように見える)と虚しくなり、焦るときもある。やがてその思いだけにとらわれてしまうと、今の生活が苦しくなってしまう。

 孔子はかつて、「一箪(たん)の食(し)、一瓢(ぴょう)の飲(いん)」という言葉を残した。これは、孔子が「正当な弟子」として認めた、顔回(がんかい)の生活ぶりを表した言葉だといわれる。

 3000人もいた孔子の弟子の中で、顔回はたった1人、当時の経済が豊かになろうが貧しくなろうが「一わんの飯と、ひさご一杯の汁をすすり、せまい路地裏で」の生活を続けていた。周囲がどうであろうとマイペースを貫き「人間が徳の世界に生きる真の価値を、一途に発覚させていった」のだという。

 周囲のことは気にせず自分はどう生きるのかを貫く。孔子が「最高の弟子」とまで称えた顔会の生き方は見習いたくなる。

 紹介したのはもちろんごく一部で、本書では100編にも及ぶ孔子の格言とその解説を収録している。辞書のように、自身の悩みに応じたページを読むだけでもよく、いつでもそばに置いておきたくなる1冊だ。

文=カネコシュウヘイ

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