京都の魅力を再発見! 連載100回超の『グレさんぽ』 どんな世の中でも道を歩けば新しい発見が待っている

暮らし

更新日:2023/4/10

グレさんぽ ~コロナとか養蜂とか京都とか~
グレさんぽ ~コロナとか養蜂とか京都とか~』(グレゴリ青山/小学館)

 著者のグレゴリ青山さんは京都生まれ京都育ちで、30年近く漫画家として活動している。その情報を聞いただけではぴんと来ないかもしれない。

 それでは聞き方を変える。

 あなたは旅が好きだろうか。古本屋が好きだろうか。京都が好きだろうか。フィギュアスケートが好きだろうか。田舎の空き家で暮らすことに少しでも憧れたことはあるだろうか……。

advertisement

 どこかに何かしらひっかかるポイントがあるだろう。「はい」と答えた瞬間、私たちはグレゴリワールドに飛び込める。

 1966年、京都に生まれ育ったグレゴリ青山さんは、古本屋などでアルバイトをしてお金を貯め、バックパッカーになった。

 おそらく行動力やバイタリティはそのときに培われたのだろう。数十年経った今も彼女は散歩をしたり旅をしたりして、新しい何かに出会う。その出会いを題材にしたのが『月刊フラワーズ』(小学館)で連載中の「グレさんぽ」だ。そして、このたび3月にそのおさんぽの様子が1冊の本『グレさんぽ ~コロナとか養蜂とか京都とか~』(グレゴリ青山/小学館)になった。

 今回、グレゴリ青山さんは初めてラジオ出演をしたり、美術館で行われるダンスのワークショップに参加したりと、新たなことにチャレンジをする。

 それだけではない。新型コロナ流行による緊急事態宣言で、遠くに行けなくなったことをきっかけに、日常で見逃してしまうようなことも、目をこらせば不思議で新鮮だと気づき「今、この場所でできること」にも焦点をあてるのだ。

 旅ができなくなった著者は、なつかしい旅の思い出を思い出す。本作を読んで驚かされるのはグレゴリ青山さんの記憶力である。ことこまかなやりとりや見た景色、思いがけない出来事など、すべて鮮やかに描写されている。そして思い出を蘇らせながら、グレゴリ青山さんは考える。

わざわざ遠出せんでも 近場で行ったことのないおもしろいところ まだまだありそう…

 歩いている人が少ない道を歩き、京都の山科や奈良を巡る。ひとりでも、とりとめのない散歩はできる。どこに住んでいても、どこに行っても。

 本作には特別描きおろし「京都人が知らない京都」が収録されている。著者が、東京出身で大の京都好きの編集者と京都を歩き、自分の知らない京都の魅力を再発見するといった内容だ。

 自粛の明けたいま、グレゴリ青山さんはどこにいるだろうか。

 京都でおもしろいものを発見しているだろうか。それとも旅に出て、「何か」を見つけているのだろうか。

「グレさんぽ」は連載100回を超えた。今後も今の時代を背景に描かれるグレゴリ青山さんならではの眼差しが楽しみで仕方がない。

文=若林理央

あわせて読みたい