アイスコーヒーは日本で進化した飲み方!? ブレイクタイムにちょうどいい、意外と知らないコーヒーの話

暮らし

公開日:2023/3/31

世界のビジネスエリートは知っている教養としてのコーヒー
世界のビジネスエリートは知っている教養としてのコーヒー』(井崎英典/SBクリエイティブ)

 目覚めの一杯や仕事のお供、リラックスタイムなど、私の生活にコーヒーは欠かせない。世界にはそんな人がたくさんいて、世界中で一日に飲まれているコーヒーは、なんと20億杯とも言われているそうだ。

 愛好家が多いからこそ、共通の話題としてコーヒーのことを知っておくといろいろな場面で役に立つ。そう教えてくれるのが『世界のビジネスエリートは知っている教養としてのコーヒー』(井崎英典/SBクリエイティブ)だ。著者の井崎英典氏は2014年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップでアジア人初の世界チャンピオンとなり、以後はコーヒーコンサルタントとして国内外で活躍するいわゆるコーヒーの達人。そんな井崎氏が教える、意外と知らないコーヒーの話を紹介しよう。

コーヒーと日本人

 私たちの生活にすっかりおなじみのコーヒー。日本ではいつから飲まれているのだろうか。コーヒーが初めて日本にやってきたのは、江戸時代の鎖国中だった1640年代。長崎の出島にオランダの商人が持ちこんだのがはじまり。しかし、日本で広まったのは200年後の開国のときであったそう。文明開化とともに現れたカフェは、主に社交の場として使われた。その後、現在も続く「コーヒーをゆっくり味わう場所」としての喫茶店が増え、今に至る。

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 日本では、コーヒーはホットかアイスか選ぶもの。一年中アイスコーヒーを飲む人もいるだろう。だが実は、冷たいコーヒーを飲むのは世界的には珍しいことなのだとか。今でこそスターバックスなど大手チェーンのメニューに組み込まれ一般的になったが、コーヒーの歴史の中では新しい飲み方なのだ。

 一方、明治時代の日本では「氷コーヒー」というメニューがすでに確認されている。輸入され始めてすぐに冷やして飲むようになったのだ。アイスコーヒーが日本独自の進化であったとは、なんとも意外な事実だ。

専門家のお墨付き「スペシャルティコーヒー」とは

 コーヒーにこだわりがある人なら、専門店で「スペシャルティコーヒー」を飲んだことがあるかもしれない。栽培から徹底的に管理し、風味と味わいが良く、最高品質が保証された豆だ。カッパーと呼ばれる専門家が風味と味わいを判定し、スペシャルティコーヒーを選出する。

 味や香りは主観による部分が大きい。そこで日本スペシャルティコーヒー協会では、カッパーができるだけ客観的に判定できるよう7つの基準を定めている。その一つが、「後味の印象」だ。コーヒーを飲み込んだ後に残る感覚が刺激的でないか、甘みは残るか、といった部分から判定する。日本人は雑味のないスッキリした後味のものを好むので、雑味・後味に関しては特に厳しく判定している。

 スペシャルティコーヒーはその品質の高さから高価になりがち。今は物価高と円安の影響で価格は正直厳しいものがあるだろうが、たまには選びぬかれた味を楽しむのもアリではないだろうか。

安くておいしいコーヒーの秘密

 日本では、おいしいコーヒーが安く飲めることが当たり前。大手コンビニエンスストアやファストフード店では、スペシャルティコーヒーに次ぐ品質の「プレミアムコーヒー」を使用し、自社商品との相性を研究して焙煎・抽出したものを100円程度で販売している。おいしいコーヒーが安く買える店で、ついでにランチを買う、という呼び込みの役割を果たしているため、コストカットして味が落ちると意味がない。その結果、「安い割においしい」ではなく、「本当においしい」コーヒーが100円程度で飲めているのだ。

 しかしこの企業努力が、「良いものが高く売れない」という問題も引き起こしているという。良いものに対して相応の対価を支払うことで、生産地にまでお金が行き渡り、安定しておいしい豆を生産することができる。それが本来あるべき姿のはずだ。安く飲めているコーヒーに対して、どうすればお金をかけてもらえるかが、今後のコーヒー業界の課題となっている。私たち愛好家がコーヒーの生産にかかる手間や、高品質な豆の価値を正しく理解することも大切だ。

 本書ではコーヒーの歴史や、栽培から私たちに届くまでの過程、コーヒーの未来についても解説されている。

 そして、注目すべきは巻末のコーヒーの淹れ方実践編。豆の選び方、道具の使い方など、初心者が知りたいことがやさしく紹介されている。まずはここから読んでみて、おいしいコーヒーを淹れ、じっくりと味わいながら本編を読んでほしい。

文=冴島友貴

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