人気韓国アイドルも愛読! 「他人と自分を比べてしまう」「自己卑下してしまう」 頑張り屋の日本人に響く韓国発のエッセイ集

暮らし

更新日:2023/7/7

今日はこのぐらいにして休みます
今日はこのぐらいにして休みます』(ソン・ヒムチャン:著、黒河星子:訳/飛鳥新社)

 心や体が鉛のように重いのに、自分を労れない日が私たちにはある。日本人は真面目な人が多い。だからこそ、「今日はこのぐらいにして休みます」なんていう休養宣言を口にして、自分を甘やかすことは難しい。

 そんな頑張り屋さんの心をほぐしてくれるのが、韓国発のエッセイ集『今日はこのぐらいにして休みます』(ソン・ヒムチャン:著、黒河星子:訳/飛鳥新社)。本書は2018年に韓国で発刊されて以来、人々に愛され続け、累計17万部突破を記録したベストセラー。

 韓国の人気アイドルグループSEVENTEENのドギョムやStray Kidsのリノも愛読しており、ラジオ配信をしたことがある。

advertisement

 ここに綴られているのは仕事、人間関係、恋愛などあらゆるシチュエーションで心のお守りとなってくれる82のメッセージ。著者が男性であるため、女性だけでなく、男性にも刺さる言葉が多い一作だ。

他人と自分を比較してしまう人へ

 生きていると、隣の芝生がとんでもなく青く見えることが何度もある。その度に私たちは他者と自分を比較し、本来一番愛してあげるべき自分という存在を卑下し、劣等感を抱えてしまう。

 そんな苦しさを感じた時、思い出してほしいのが、「ほかの人の名シーンと自分を比較しない」という著者のメッセージだ。

 著者は、羨ましく見える他人の姿は、その人にとって一番いい状態であるため、普段のくたびれた自分の姿と比較をするのは間違っていると指摘。他人ではなく、自分自身に目を向け、今日1日で成し遂げられたことに感謝をし、それらを愛する訓練をしてみようと語っている。

他人をうらやむというのは、その人がもっているなんらかの特質に憧れていることを意味する。その人そのものになりたいわけではないのだから、その特質を自分なりに追求し、自分の個性のなかに取り込み、溶け込ませればいい。

 そう話す著者は劣等感を克服する方法として、自分の長所を発見して、認めるようアドバイス。そのためには、これまで自分がやってきたことを振り返ったり、他人から褒められた記憶を思い出したりするのがよいのだとか。

 著者の助言や言葉は自分を愛せなくなってしまっている人に、深く響く。私たちは誰もがオンリーワンの存在。誰かを羨むより、自分が持っているものの活用法に目を向けると、思わぬ道が開ける可能性だってあるのだ。

「自分を卑下することと謙遜することの違い」

「卑下」と「謙遜」はまったくの別物

 私なんて…と謙遜をするのは、日本人らしい文化だ。自分の能力を過大評価せず、謙虚な姿勢を見せられるのは、日本人の美徳である。だが、一方で、謙遜と卑下を混同し、自分の価値を下げてしまっている人も意外と多いように思う。

 著者いわく、謙遜は自分を過大に見積もらず、客観的に見つめる姿勢であるため、自分と他者の違いを認め、他者を尊重できるという。だが、卑下は他人から好き勝手評価される前に自ら自分の値打ちを下げてしまう行為なのだとか。

 一言が及ぼす影響の大きさを知っているのに、なぜ自分を貶めることに時間を使うのか。著者はそう指摘し、アメリカの哲学者ラルフ・ウォルドー・エマソンの言葉を引用し、他者への話し方を見つめ直そうと訴える。

人は誰でも、自分の話す言葉をもとに他人から評価される。
望むと望まざるとにかかわらず、自分が発する1つひとつの言葉によって人前で自画像を描くというわけだ。
ラルフ・ウォルドー・エマソンの言葉

 驕らず謙虚な人が多い日本人は他者を気遣える一方で、自分を優しく包み込むことは苦手だ。本書との出会いを通じて、人前で過剰に自分を卑下するほど、あなたはダメ人間ではないということに多くの人が気づいてほしい。

 なお、著者は自身の恋愛話を通し、誰しも頭を抱えやすい恋の悩みへの解決ヒントも伝授。傷ついた幼少期や母親への葛藤も明かしつつ、家族問題という根深い悩みにも愛のあるアドバイスを寄せている。

 本書には心の中にある言語化しづらかった心の痛みが“言葉”として表現されているため、自分が何にどう傷ついていたのか気づけ、癒し方を見つけることができるのだ。

 自分の休息を邪魔していることに向かって、「今日はこのぐらいにして休みます」と言ってほしい――。そんな優しい著者の想いが、多くの頑張っている人に届いてほしい。

文=古川諭香

あわせて読みたい