「世界史を学べば、旅は100倍楽しくなる」待ちに待った海外旅行。現役世界史講師が指南する「世界史の目」を手に入れて、解像度の高い旅へ!

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公開日:2023/6/18

人生を彩る教養が身につく 旅する世界史
人生を彩る教養が身につく 旅する世界史』(佐藤幸夫/KADOKAWA)

 3年間の空白を経て、ようやく、「海外旅行への渇望」を感じ始めた方も多いのではないだろうか。記念すべき旅のリスタートは、どんな場所から始めよう。どんな濃密な旅にしてくれよう!

 そんな、熱き海外旅行家に手に取っていただきたいのが、『人生を彩る教養が身につく 旅する世界史』(佐藤幸夫/ KADOKAWA)だ。著者の佐藤幸夫氏は、現在、エジプト在住で世界史ツアーを主催しながら、現役で大手予備校の教壇に立ち続けるというグローバル&二刀流の個性派講師。本書は、世界102か国、300以上の世界遺産で体感した「旅×世界史」の面白さを多くの学生や社会人に広げてきた著者による、旅のパートナーとなる一冊だ。

 著者は本書の冒頭で、「世界史を学べば、旅は100倍楽しくなる」と語る。

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 息を飲むような絶景や史跡そのものが放つ、圧倒的な美や存在感を肌で感じることは、旅の醍醐味だ。しかし、その絶景の背景にある歴史のダイナミズム、史跡を取り巻く歴史の流れや人間模様を知った上でその場に立つと、それまで見えてこなかった景色が立ち上がってくる。

 荒野のただなかに柱だけが並ぶ遺跡で人々の営みを眼前に想像できるかは、少しでも歴史に触れたかどうかで決まる。著者の言葉を借りると「『世界史の目』を持つと、名所の解像度が上がる」のだ。

 私自身、著者の世界史講座に参加したひと月後、イスタンブルへ一人旅をしたことがある。かりそめながら「世界史の目」を持ったことで、いつも以上に記憶に残る旅になった。

 一見、ただの石壁である「テオドシウスの城壁」に触れ、「これが、コンスタンティノープル(現イスタンブル)を守ってきたんだ」としみじみしていたあの時間は、今でもはっきりと思い出せる。壁を凝視し、写真を撮りまくる私を周囲はいぶかしんでいたかもしれないが、世界史の学びが旅を楽しくしてくれた実感がある。

 本書の内容は、3部で構成されている。

 第1部は、世界史のターニングポイントをめぐる旅。9つの地域をめぐる歴史の変遷と、各地域の観光名所を「世界史の目」で解像度高く楽しめる情報が満載だ。

 一例を挙げると、パリのコンコルド広場。今は優雅な噴水やオベリスクが印象的な場所だが、フランス革命時にギロチン台が置かれていたそうだ。処刑時の光景を思い描く必要はないかもしれないが、次に広場を訪れたなら、幾層にも重なる歴史を感じ取れることだろう。

 第2部は、絶景からダイナミックな歴史を感じる旅。写真や映像だけで十二分に惹きつけられる絶景も、歴史を学んだ上で出会うとひと味違うだろう。

 インカ帝国の遺跡マチュ・ピチュ、イスラエルのオリーブ山など、ツアーガイドがつく可能性が高い絶景も数多く紹介されており、現地ガイドの説明がより頭に入りやすくなるはずだ。

 第3部は、知的好奇心をくすぐるワンランク上の旅。日本人に人気の旅先の歴史ポイントが一挙に紹介されている。

 おなじみのハワイ諸島にも、もちろん歴史の重なりがある。ハワイ王国の建国から滅亡、アメリカ合衆国併合以降の近現代史を知れば、ビーチリゾートらしい旅も楽しみながら、新たな行き先がひとつ、ふたつと増えていくかもしれない。

 本書の楽しみ方は、幅広い。旅の準備として歴史をおさらいしてもいいし、気になるページからランダムに眺め、歴史を深掘りしたくなるエリアを見つけても面白いし、「いつか行きたい場所」をリストアップするのもまた楽しい。

 ここまでは「旅好き目線」でレビューしてきたが、もちろん、世界史に興味を持つ学生や社会人の方にもぜひおすすめしたい。著者が提案する「旅×世界史」の面白さは、人生を豊かに彩ってくれることだろう。まさに本書は、予備校で世界史の面白さを伝え、全世代に向け世界史ツアーを主催する著者だからこそ生み出せた1冊だと感じる。

文=岡島梓

【著者プロフィール】
佐藤幸夫
大学受験予備校代々木ゼミナール世界史講師。大人のための世界史学び直しツアーを開催するほか、現在はエジプトに在住し現地でもツアーを企画している。著書に、『大学入試 マンガで世界史が面白いほどわかる本』(KADOKAWA)などがある。

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