ピー(P)ナッツよりも甘い「Qなっつ」って!? NHKの人気番組「コウケンテツの日本100年ゴハン紀行」書籍化!

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公開日:2023/7/14

コウケンテツの日本100年ゴハン紀行
コウケンテツの日本100年ゴハン紀行』(NHK「コウケンテツの日本100年ゴハン紀行」制作班/中央公論新社)

 アジア、ヨーロッパとさまざまな国を旅してきた人気料理研究家・コウケンテツさんが、「100年後に残したい日本の食」を探して日本全国を旅するNHKのTV番組「コウケンテツの日本100年ゴハン紀行」。2023年で放送4年目となる本番組は、その日本各地の土地ならではの食文化や生活を感じ、再発見しようという旅番組。2023年7月7日、そんな本番組を再編集した書籍版、『コウケンテツの日本100年ゴハン紀行』(NHK「コウケンテツの日本100年ゴハン紀行」制作班/中央公論新社)が発売された。

 本書では、コウケンテツさんが「100年先の未来まで続いてほしい」と願う料理をはじめとした食文化はもちろん、各地域で暮らす人々の魅力など、時間の関係でTVでは伝えきれなかった部分にも焦点を当て、より深くその地の文化を知ることができる内容になっている。書籍第一弾で巡るのは、千葉県の房総半島と、岩手県の三陸・遠野地方。旬の食材を活かしたお手軽なアイデア料理で、日々のごはん作りを応援しているコウケンテツさんならではの気づきや発見、新たなオリジナルレシピは、食に興味のある人なら思わず触れたくなるものばかりだ。

たこめし、チッコカタメターノ、Qなっつ…… 千葉県「房総半島」

 房総半島南部を走るいすみ鉄道。通称「菜の花鉄道」と呼ばれ、全長26.8kmの区間のうち15kmにわたって咲き誇る菜の花畑が人気だ。この鉄道の国吉駅で出会ったのは、菜の花鉄道のかぶりものをかぶっていすみ鉄道の応援団長をしている掛須さんの手作り弁当「たこめし」。地元のお米とマダコを使った「たこめし」は、もう10年以上売り続けているそう。

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コウケンテツの日本100年ゴハン紀行

「お米一粒一粒にタコの旨みがギュッと入っていますね」と、コウケンテツさんも絶賛。訪れた際にはぜひとも食べてみたい……。

 また、酪農家に伝わる「チッコカタメターノ」にもとても興味をそそられる。房州弁で牛乳を指す「乳(ち)っこ」を固めたもの、という意味らしく、出産直後の母牛からとれる初乳を使って作る濃厚でチーズのような食感の食べ物だ。作り方は家庭でも作れるカッテージチーズと似ているが、コウケンテツさんいわく「弾力が格別」なんだそう。さらに本書では、このチッコカタメターノを使ったコウケンテツさんのオリジナルレシピも紹介されている。

コウケンテツの日本100年ゴハン紀行

 房総半島には、ほかにもエディブルフラワー、ピー(P)ナッツよりも甘い「Qなっつ」、いわしのごま漬け、糖度がフルーツトマト並みの極甘れんこんなど、一度は食べたい、100年後にも残したい食材が多数存在するようだ。

ウニ、空飛ぶ郭公だんご、もち本膳…… 岩手県「三陸・遠野地方」

 後半で紹介されている「岩手 三陸・遠野地方」も負けていない。海底から湧き出す伏流水と豊かなコンブで育った吉里吉里(きりきり)のウニは、キロ2万円を超えるという極上品。地元では、生食には向かなくなった産卵時期のウニも無駄なく消費するため、ウニ漁師ならではのウニ活用レシピも根付いているそう。

コウケンテツの日本100年ゴハン紀行

 そして本書の中でも特に気になったのが、岩手県最南端の一関市名物「空飛ぶ郭公だんご」。国の名勝・天然記念物に指定されている「厳美渓」で売られる団子だが、ここの注文方法がとても面白いのだ。明治40年創業の郭公屋から、渓流を隔てて反対側の東屋までロープが張られており、ロープに下げてある籠に注文と代金を入れて木槌を鳴らすシステム。しばらくすると、注文した団子とお茶がロープを伝ってやってくる。

コウケンテツの日本100年ゴハン紀行

 日常ではなかなかお目にかかることのないイベント感に、想像するだけでワクワクしてしまう。

 ほかにも、東北有数の穀倉地帯である一関市の独特な餅文化、遠野盆地のホップ栽培にも注目したい。一関市では、お祭りやお正月だけでなく頻繁に餅をつくようで、代表的な郷土料理「もち本膳」は食べる順番、作法が決まっているのだとか。ホップも、日本で生産されているホップの約半分は岩手県産なんだそう。

コウケンテツの日本100年ゴハン紀行

 ホップの木は、1日に30cm伸びることもあるというから驚きだ。ここでも、東北の人たちに欠かせない鮭とビールを掛け合わせたオリジナルレシピを考案。こちらの詳細は、ぜひ本書で確認してほしい。

 このほか、まだまだ注目したい各地方独特の食文化、現地の人々との交流、コウケンテツさんのオリジナルレシピが多数紹介されている。夏の休暇を利用して、本書を手にこれらの地域を巡ってみるのも楽しそうだ。この本があれば、きっと現地を何倍も味わい尽くせるはず。筆者も全国を旅して「100年後に残したい日本の食」を探してみたくなった。

文=月乃雫

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