カメラを始めてみたい人を後押し! 『ヤマノススメ』作者が描くカメラ初心者向けのガールズホビーコミック

マンガ

公開日:2023/7/16

カメラ、はじめてもいいですか?
カメラ、はじめてもいいですか?』(しろ/少年画報社)

 青い空、大きな雲、青い海、そして緑が映える山。美しい景色が撮れる絶好のシーズンに、「カメラをいつか始めてみたい」と考えている人へ、あるコミックを紹介したい。

 ファインダーを覗くと、新しい世界が見えると同時に、自分の視点や価値基準といった内なるものにも気付くことができる。これらの利点をカメラ未経験者に言語化して説明することは容易くない。だが、『カメラ、はじめてもいいですか?』(しろ/少年画報社)を読めば、写真の魅力を疑似体験できる。本作は、『ヤマノススメ』のしろ氏が描くガールズホビーコミックだ。

 自分に自信がない主人公の女子高生ミトは、隣人のお姉さん・チサトに誘われてカメラを知り、そしてチサトに憧れて、全くの素人からカメラを始める。カメラ未経験の読者は、ミトの経験や気付き、成長を通して、カメラを知ることができる。

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 本作の魅力は、なんといっても、カメラや写真の素晴らしさを、情緒的で美しい空気感によって描き出しているところだ。例えば、本作第1巻の1話目では、ミトはチサトに連れられて、風車の回る海岸を訪れる。風が強く吹く丘に上がったミトは、霞む地平線に見惚れる自然体の姿をチサトに撮られる。ミトは恥ずかしがりながらも、「いつもの冴えない私じゃないみたい」と、写真の出来栄えに感動する。

 また3話目で、引っ込み思案で臆病なミトは、本格的なカメラを人前で出す度胸がなくオドオド下を向いていたあるとき、自分の影が伸びていることに気付く。振り返り見ると、背後の森から、夕日の光が漏れ出ていた。ミトは夕日を撮りたい一心で、夢中になってジャングルジムのてっぺんへ登り、やっと見えた森の向こうの夕日を撮る。ミトがシャッターを切るまでの動の描写と、切った後の静の描写の対比が、非常に情緒的で美しい。そして、カメラを手にすると、ここまで人の行動を変えてしまうものなのか、と思ってしまうだろう。

 シャッターを切れば切るほど、自分の内面が磨かれていく。本作の主人公を追えば、これを直感的に体験できそうだ、と1巻を読了した時点で確信した。

 ちなみに本作は、カメラ沼にはまった著者が出会ったいくつもの機種が登場し、スペックなども紹介される。カメラを始めたいが、どんなカメラから始めたらいいか迷っている読者や、カメラマニアにもオススメしたい。

文=ルートつつみ (@root223

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