大谷翔平選手が熟読した中村天風の哲学と、誰でも実践できる「心を積極的にする」暗示法3種

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公開日:2023/7/31

まんがでわかる中村天風の教え
まんがでわかる中村天風の教え(Business Comic Series)』(さとうもえ:著、鈴本彩:著、天風会:監修、平野秀典:監修/あさ出版)

 連日、遠くアメリカから日本人の心を熱く沸き立たせている人物といえば、大谷翔平選手だ。大谷選手は、なぜあれほどの人間離れした活躍ができるのだろう、と多くの人が不思議に思っているはずだ。大谷選手といえば、高校1年生のときに作成したマンダラート法(マンダラチャート/曼荼羅シートとも)が有名で、ここに書かれた内容をストイックに実行し、習慣化したから、という説明もできるだろうが、それにしても、多くの人はそこまでストイックに徹しきれない。

 そんな疑問を抱いているとき、目に飛び込んできたのが「大谷翔平選手がメジャーに行く前、熟読していたと話題の『運命を拓く 天風瞑想録』(講談社)の教えをまんがでわかりやすく紹介」という書籍紹介の一文。本書『まんがでわかる中村天風の教え(Business Comic Series)』(さとうもえ:著、鈴本彩:著、天風会:監修、平野秀典:監修/あさ出版)は、中村天風哲学が凝縮された『運命を拓く 天風瞑想録』を、マンガでわかりやすく紹介した一冊ということで、さっそく入手して読んでみた。

 本書は、中村天風について、日本政財界のリーダーたちに影響を与え続けている人生哲学の第一人者であると紹介している。先述の大谷選手以前にも、古くは東郷平八郎、松下幸之助、首相であった原敬ほか、稲盛和夫、松岡修造など幅広い業界人に愛読されており、ビジネスパーソンはもちろん、人生に悩むすべての人に役立つ教えが詰まっているという。

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 わかりやすいマンガ仕立てだと述べたが、内容もわかりやすく多くの読者にとって身近なものとなっている。主人公は、仕事がうまくいかず失業中の里子(28歳)。自身の気弱で消極的な性格にも悩んでいる。そんな彼女は、ふとたどり着いたある居酒屋で、数人との重要な出会いがあり、中村天風哲学に巡り合う。そして、中村天風哲学を解釈していく中で、人生を良い方向へと向けていく、といった心が温かくなるサクセスストーリーが描かれる。

 本書では、里子が悩みに出会うたび、中村天風哲学によって克服される。

 例えば、里子が、何をやってもうまくいかない中で「何でこんなに 運が悪いんだろう…」とつぶやくシーン。ここで、居酒屋の常連で初老の紳士が、運命には2種類あり、どうにも仕様がない運命を「天命」といい、人間の力で打ち開くことのできるものを「宿命」といって、心を積極的にすれば運命のほとんどである「宿命」を乗り越えることができる、と中村天風哲学を紹介する。積極的な心というのは、このシーンでは、里子が職場で仕事を失敗し退職して悲しみに執着している状況を、「自分の人生を見つめ直す機会をもらえた」と考えることで乗り越えられる、という解釈だと説明している。

 このように、折にふれて“人生を好転させる”中村天風哲学がわかりやすく、少しずつ読者に流れ込んでくるのが、本書の構成である。かの大谷選手が実践しているかどうかはわからないが、「心を積極的にする方法」のうち私たちでも実践しやすいものを、簡単に紹介したい。

 本書で紹介されているこの方法は、人間の「暗示にかかりやすい性質」を利用するものだそうだ。人間は、心理学的には心の働きを「実存意識」と「潜在意識」に分けることができ、自分で意識できない潜在意識を変更するのは不可能にも思えるが、暗示によって変えられることを天風が発見した、というのだ。その方法は次の3つがある、と述べている。

(1)連想暗示法…就寝前に楽しいこと、うれしいことを考える。どんなことでもよいので、明るく、積極的なことを考える。このような感情で眠ると、脳がよく休まり、良いアイデアを思いついたり、行動したりできるようになる。

(2)命令暗示法…寝る際に、自分の願いを自分に命令する。鏡に映る自分の眉間に向かって、自分のなりたい心の状態をひとつ、1回だけ命令する。「お前は」「君は」「あなたは」など二人称で、「お願い」や「お祈り」ではなく「命令」として、小声で真剣に、一晩にひとつだけ、そして実現するまで継続する、というルールがある。

(3)断定暗示法…朝起きたときに、昨夜の願いが叶ったと断定する。前述の「命令暗示法」で言った暗示の言葉を、ここでは「断定」して言う。つまり、命令暗示法で「私は意志の強い人間になる!」と言ったならば、ここでは「私は意志の強い人間になった!」と言う。力強く言うこと、1日の中で何度も行うことで効果が高まる、などの特長がある。鏡は使っても使わなくてもよい。

 繰り返しになるが、この3つの暗示法を大谷選手が実践しているかは定かではない。しかし、少なくとも熟読したとされる中村天風哲学にふれることで、私たちもよりよい自分になれる希望は大いにある。

文=ルートつつみ (@root223

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