女性向け風俗店のリアルを内勤で働く女目線で描く。大量のアダルトグッズや警察沙汰になる痛い客など、生々しい実情の数々

マンガ

公開日:2023/8/12

女性に風俗って必要ですか?
女性に風俗って必要ですか?』(吉岡その:原案、ヤチナツ:漫画/新潮社)

 女性向け風俗店、略して女風(じょふう)という言葉を聞いたことはありますか? 一般的に“風俗”と呼ばれるものは女性店員が男性へ接客を行うものであるのに対し、男性店員が女性へ接客を行うのが女性向け風俗店です。どんな男性が働いていて、どんな女性が利用するのか? 謎の多い女風の裏側を紹介してくれるのが『女性に風俗って必要ですか?』(吉岡その:原案、ヤチナツ:漫画/新潮社)です。ディープな内容ですが過剰な性描写はなく、『20時過ぎの報告会』などでも知られるヤチナツ氏のポップな絵柄も手伝って、すらすらと読み進めることができます。

 主人公は吉岡その・28歳。飲食店でアルバイトをしていたものの、コロナ禍でお店が急に閉店。途方に暮れていると、友人から「人材派遣の事務の仕事を紹介できる」と言われ、すぐに飛びつきます。しかしいざ職場に行くと棚には大量のアダルトグッズ、狭い部屋に若い男の子たちが詰め込まれていてなんだか様子がおかしい……。そのはそこで自分が引き受けた仕事が女性向け風俗店の裏方(内勤スタッフ)だったことを知るのです。

 そもそも男性経験の少ないその。アダルトグッズの使い方がわからず怒られたり、セラピストと呼ばれる男性従業員向けの講習会に施術を受ける女性側として参加させられたりと、新しい世界に戸惑いを隠せません。その上既婚者からの予約が多いことに辟易していたそののもとに、一本の電話が。それは夫婦のセックスレスに悩み、夫からの提案で3Pの依頼をしてきた女性からのものでした。この女性の依頼をきっかけに、はじめて仕事にやりがいを感じたその。そのほかにも20代で性行為未経験の女性や、「彼氏との性行為を辛く感じるのは、自分の体に問題があるのでは」と悩む女性など、女風を利用するさまざまな動機を持つ人々が登場。女風を利用することで日々を前向きに生きようとする彼女たちとそれを癒すセラピストの姿からは、なんだか「自分もそのままでいていいんだ」と勇気がもらえます。

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 そして女性も様々なら、セラピストたちも様々。ゲイで見た目は女性の七海、外見の魅力はそこまでないものの、セラピストになってから得た知識でランカー(売上TOP5)に入る元介護士・柊太郎、業界歴20年のベテランで女性の性の悩みに応える寛九郎など多くの男性たちが登場します。彼らが女性を癒す方法は千差万別。しかしどのエピソードもこの業界で働く男性たちがセラピストと呼ばれることに納得がいくものでした。

 本書に書かれているのは、もちろん良いエピソードだけではありません。セラピストとして人気が出れば出るほど、本気でセラピストを好きになるあまり迷惑行為をしてしまうお客さん=痛客がついてしまうことも。仮の名前やアカウントで複数の予約を入れておいてキャンセル連絡も入れずにバックレたり、別れ際に「帰らないで」と激しく抵抗して警察沙汰になったり……。そんな業界あるあるも描かれており、お仕事ものとしても楽しく読める一冊。ぜひ気軽に手に取ってみてください。

文=原智香

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