日本は本当に“オワコン”なのか? 国際データと比較して見える、社会課題の現状と行く末

社会

公開日:2023/8/28

日本の絶望 ランキング集
日本の絶望 ランキング集』(大村大次郎/中央公論新社)

 日本は“オワコン”だと、いつから叫ばれ始めたのか。かつては世界から“ジャパン・アズ・ナンバーワン”とまで称されたこの国であったが、今や、国の将来を嘆く声も少なくない。

 実際、その声は正しいのか。書籍『日本の絶望 ランキング集』(大村大次郎/中央公論新社)は、数ある国際データから「インフラ、医療、経済、教育、家計など」の現在を読み解く一冊だ。データから見えるのは絶望か、希望か。一部抜粋で、その内容を紹介する。

1970年代後半にはじまった「少子高齢化」への対策が急務に

 少子高齢化に伴い、将来訪れる“老後”に不安を抱く現役世代は少なくない。かねてより叫ばれている日本の社会課題だが、これが加速したのは「政治の無策」によるもので、ひいては「人災」だと著者は主張する。

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 本書によるとじつは、「少子化」の課題を抱える国は日本だけではなかった。日本の少子化が戦後のベビーブームを経た「1970年代後半」にはじまったのに対して、欧米は同時期に日本よりも「深刻な少子化」になっていたとは驚く。

 しかし、現在までに欧米は「子育て環境を整える」など対策を打ってきた一方、日本は「深刻な状況」を見過ごしてきた結果として「急激な少子高齢化」に頭を抱えている。関連するものとして、本書で取り上げているのが「児童手当や就学前児童への給付、各種社会保障、社会福祉などへの支出」を示す「家族関係支出(GDP比)」のデータである。

 令和4年(2022年)の「少子化対策白書」によると、「家族関係支出」の1位は“福祉国家”として知られるスウェーデンの「3.40%」で、イギリス、フランス、ドイツと続く。対して、日本は「1.73%」と他国よりも比率が低い。1974年時点では「2を少し上回っていた」という「合計特殊出生率」も2017年時点で「1.43」に低下。人口減少による経済規模の縮小も懸念される少子高齢化への対策は、やはり急務だといえる。

公共事業費をかけながらも他国に後れをとる「社会インフラ」

 日本の「社会インフラ」は、世界屈指である。そうしたイメージを抱いている人たちも少なくないはずだ。しかし、著者は「日本は社会インフラがボロボロで、先進国とはとても言えない」と痛烈に指摘する。

 じつは、世界の先進国と比較すると日本は「公共事業費」の割合が大きい。本書が取り上げる財務省の資料「公共投資の規模(国際比較)」では、2020年度の「主要先進国の公共事業費(GDPに占める割合)」は、日本が「3.7%」で1位に。2位は「2.9%」のフランスで、イギリス、ドイツ、アメリカと続く。ただ、予算をかけてはいるものの「公共事業の質」を見ると「そのお粗末さは言語を絶するほど」だという。

 例えば、日本ならではの光景である「電柱」の存在は、公共事業の視点から見ると社会インフラの遅れを象徴している。国土交通省による「無電柱化の整備状況」にある2023年4月現在の「主要都市の無電柱化率」によれば、「イギリス・ロンドン」「フランス・パリ」「シンガポール」は「100%」で、続く「台湾・台北」が「96%」、「韓国・ソウル」が「49%」となっている。対して、日本は「東京23区」で「8%」、「大阪市」で「6%」とだいぶ下回っているのだ。

 情緒的に捉えるならば、この国ならではのものと納得できるかもしれない。しかし、災害大国でもある日本にとって、電柱の存在は「大きな危険要素」にもなりうる。実際、2019年9月発生の台風15号では「千葉県を中心に90万戸で停電が発生し、3週間近く復旧しない」という被害が発生したが、これは、電線の「地中化」により防げた可能性もある。公共事業に「巨費」を投じているにもかかわらず、いまだ整備が進まない状況は「行政の無策」だと著者は主張する。

 この国の現状を知って、心苦しさがより強くなる人もいるかもしれない。しかし、けっして「絶望」だけではない。目の前にある「危機を脱する」ために、何をすべきか。読者と共に「考えていきたい」とメッセージを放つ本書は、日本の未来へ希望を見出すための一冊でもあるのだ。

文=カネコシュウヘイ

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