“良い漫画を描くために”ギャルとの疑似恋愛開始!? 2次元で繋がる青春ラブコメ『描くなるうえは』

マンガ

公開日:2023/8/31

描くなるうえは
描くなるうえは」(高畑弓:原作、蒲夕二:作画/白泉社)

 ヤングアニマル及びヤングアニマルWebで連載されている「描くなるうえは」(高畑弓:原作、蒲夕二:作画/白泉社)の第1巻が発売された。

 当作品の主人公の上原くんは、2次元をこよなく愛している漫画家志望の男の子だ。漫画家になるための第一歩として、自分が描いたラブコメ漫画を出版社に持ち込んだが、結果は撃沈。恋愛経験のない彼が描くヒロインは、確かに「お花と動物が好きで貧血持ち」とか「将来の夢はお嫁さん」「もちろん処女」など、いわゆるオタクの妄想を具現化しただけのような存在で、編集者からはリアリティの欠如を指摘されていた。

描くなるうえは p5

 しかし、そんなヒロインだって、彼にとっては大切に描いてきた特別な存在である。名刺すらもらえなかった上原くんは、もういっそ漫画家の夢を諦めてしまおうとする。

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 そこに偶然現れたのが、クラスで目立つギャルの宮本さんだった。彼の原稿を手に取り読み始めた宮本さんは、彼の予想とは反して、大興奮で迫ってくる。というのも、彼女もまた同じく漫画家志望者だったのだ。

描くなるうえは p14

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 そして、お互いに恋愛経験の乏しさが漫画を描く上で課題になっていることを知り、(宮本さんに押し切られるような形で半ば強引に)二人は恋人になるのだった。もちろん、疑似恋愛である。漫画のために同盟を組んだ二人は、これから「漫画っぽい」シチュエーションをたくさん試していくこととなる。

描くなるうえは p20

 なんともワクワクするような幕開けだ。それまでオタクの上原くんには同じ作品を語り合う友達もいなかったが、宮本さんは上原くんと趣味が合うようで、二人はオタク話に度々花を咲かせる。また、作品だけではなく、上原くんの気持ちに対しても宮本さんは理解を示してくれる。担当から「面白くない」と一蹴された原稿が、彼女には響いた。それは同じく漫画を描く者同士、共感できることが多かったからだろう。疑似恋愛の相手ではあるが、間違いなく宮本さんは上原くんの理解者となっていくのだ。

描くなるうえは p30

 そして、それは上原くんだって同じだ。自分は才能がないとこぼす宮本さんに、彼は原稿から感じた本気と努力を必死に伝える。そんな真摯な一言一言が、宮本さんの心を動かしていく。

 また、先生から隠れるために教卓の下に二人で潜ったり、授業をサボって屋上に行ったり、夜の学校に忍び込んで二人でプールに入ったり、風邪を引いている彼の家に彼女がお見舞いに来たり……読んでいて思わず「漫画かよ!(※漫画である)」と突っ込みたくなるシーンも多いのだが、そんなコテコテの展開に思わずキュンとしてしまう自分もいる。

 そもそも宮本さんは、わりと冒頭から上原くんに対して気があるようなそぶりを見せている。彼らの疑似恋愛の中で行われるデートやイベントは、本当に漫画のためなのだろうか、それとも純粋に上原くんと一緒にいたいだけなのだろうか……どこまでが彼女の思惑かわからず、振り回されるのは読者も一緒だ。

描くなるうえは p100

 初々しい疑似恋愛にキュンとする一方で、二人の漫画に向けるアツい想いに胸打たれる瞬間も多々ある。大切なものがあるからこそ、ここまで一生懸命になれるのだ。読んでいると、二人の恋愛も将来の夢も応援したくなってくる。果たして彼らはこれからどのような関係を築いていくのか、そして、それがどのような形で漫画に反映されるのだろうか。続きが楽しみな作品である。

文=園田もなか

©高畑弓・蒲夕二/白泉社

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