その「平均値」は正しい? 日常に潜む数学の謎を解き明かす! 人気YouTubeチャンネル「ナゾトキラボ」が書籍化

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公開日:2023/9/26

それ、数学で証明できます。日常に潜む面白過ぎる数学にまつわる20の謎
それ、数学で証明できます。日常に潜む面白過ぎる数学にまつわる20の謎』(北川郁馬/ワニブックス)

 世界のできごとは「数学」で解き明かせる。書籍『それ、数学で証明できます。日常に潜む面白過ぎる数学にまつわる20の謎』(北川郁馬/ワニブックス)は、そう思わせてくれる一冊だ。

 人気YouTubeチャンネル「ナゾトキラボ【IQ&謎解きチャンネル】」運営者による本書の内容は、どれも興味深いものばかり。愛らしいヒヨコのキャラクターが軽快にかけ合う解説にも、ほっこりしてしまう。

 例えば、「平均値に騙されるな!」の章では、データが持つ危うさに気づかされる。

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 ニュースなどで「平均気温」や「平均年収」などの言葉をよく見かけるが、そもそも平均値とは、対象となる要素の「総和」を「総数」で割ったものだ。その前提をふまえて、本書の例について考えてみよう。

 ある地域には、ともに「理系クラス」と「文系クラス」を持つ「学校A」と「学校B」がある。学校Aの平均点は理系クラスで「90」点、文系クラスで「70」点。一方、学校Bは理系クラスで「80」点、文系クラスで「60」点だった。

 クラス別のデータを見ると、学校Aの方が「学力が高い」と思える。しかし、いずれも生徒数は「100人」ながら、学校Aは理系クラスが「20人」で、文系クラスが「80人」。一方、学校Bは理系クラスが「80人」で、文系クラスが「20人」という違いがあった。

 すなわち、学校Aは文系の生徒、学校Bは理系の生徒が多いことを意味する。そこで、条件の違いを是正するべく、学校全体の平均点を出すとおもしろい現象が起きる。

 全体の平均点を出す式は、どちらの学校も下記になる。

(理系クラスの平均点×人数+文系クラスの平均点×人数)÷全校生徒数の100人

 これに各校の数字を当てはめると、学校Aは「(90点×20人+70点×80人)÷100人=74点」で、学校Bは「(80点×80人+60点×20人)÷100人=76点」となり、両校を比較した結果を見ると印象が逆転するのだ。

 クラスごとの平均点か、学校全体の平均点か。いずれも間違ってはいないが、データの検証では広い視点が必要だと気づかされる。「データは人を裏切らないが、データを利用して人は人を騙す」という一節も大きな教訓となる。

 このほか、「宝くじが当たる確率は?」「直角はなぜ90度なのか?」「ハチの巣はなぜ六角形?」など、日常に隠れた疑問の数々を数学で解説している。好奇心をそそる内容には、子どもから大人までワクワクさせられるはずだ。

文=カネコシュウヘイ

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