“なでなで”は猫も竜も虜にする…『蒼竜の側用人』の作者が贈る、人外×少女ラブファンタジー

マンガ

PR公開日:2023/10/20

ドラひよ ~異世界の竜は私のなでなでに弱いみたいです~
ドラひよ ~異世界の竜は私のなでなでに弱いみたいです~』(千歳四季/白泉社)

 竜というモチーフはロマンを掻き立てる。鱗に覆われた巨体に鋭い牙や爪を持ち、翼を広げて大空を飛翔する。人間とは隔絶した強大な力に満ちた姿とその存在感ゆえに、竜×少女の人外ロマンスは大きなときめきを生み出すのだ。

 孤独な少女と秘密を抱えた竜が織りなすファンタジーロマンス『蒼竜の側用人』が人気の千歳四季氏は、少女漫画の中で竜の姿を魅力的に描いている書き手である。最新作の『ドラひよ ~異世界の竜は私のなでなでに弱いみたいです~』(白泉社)は、氏が得意とする竜を題材に、異世界転移した女子高生が子育てに巻き込まれるラブストーリーだ。

 人と関わるのが苦手な美玲は友達を作ることができず、いつもひとりぼっちで過ごしている。だが不思議と猫には懐かれる体質で、気がつくと猫たちに囲まれていた。ある時、子猫を助けようとして歩道橋から落下し、異世界に飛ばされてしまう。目覚めるとそこはヴェルこと竜王・ヴェルロイドの寝室で、目の前にはお腹を空かせて鳴いている竜の赤子のミィがいた。

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ドラひよ ~異世界の竜は私のなでなでに弱いみたいです~

ドラひよ ~異世界の竜は私のなでなでに弱いみたいです~

 侵入した「竜狩り」だと勘違いされた美玲は、竜に変身したヴェルに殺されかける。ところが抵抗しようと手が顔に触れた瞬間、殺気を放っていた彼の態度が一変。猫を虜にする美玲の「なでなで」は竜にも効果てきめんで、ヴェルはたちまち気持ちよくなってとろんとしてしまうのだった。美玲はその隙に逃げようとするも、弱ったミィを見捨てることができず、上手にミルクを飲ませてやる。利用価値があるとみなされた美玲は、「俺のつがいとなり ミィを育てろ」とヴェルに迫られてしまい――?

ドラひよ ~異世界の竜は私のなでなでに弱いみたいです~

ドラひよ ~異世界の竜は私のなでなでに弱いみたいです~

 異世界に転移した美玲が、人に懐かないはずの竜を手なずけながら、竜王との関係を深めていく『ドラひよ』。作中には気難しさの中に優しさが見え隠れするヴェルと、幼くてかわいらしい赤ちゃんのミィという、タイプの異なる竜が登場する。どちらも美玲の「なでなで」に弱いが、とりわけ美しくて恐ろしげなヴェルが美玲の手の前ではひとたまりもなく、猫のようにあやされてしまう姿は微笑ましい。物語が進むにつれて、恐ろしく思えたヴェルの中に隠されている優しさや、竜王としての苦労も明かされていく。大きなギャップをみせるヒーローと、健気で心優しいヒロインを描いた人外×少女のロマンスとしても、王道の面白さをいく作品だ。

 美玲はさまざまな苦労を背負うヴェルの姿に触れるにつれて、積極的に行動できなかったかつての後悔を繰り返したくないと、逃げることなく竜たちに向き合っていく。手助けをしようとミィの子育てに取り組むも、すぐにお腹を空かせてミルクを欲しがったり、甘えたりする元気な赤ちゃん竜のお世話は一筋縄ではいかない。美玲はミィが巻き起こすさまざまな騒動に振り回されながら、少しずつヴェルとの距離も縮めていく。三人で一緒にベッドで眠る姿は本物の家族のようで心が温まるが、1巻のラストではその平和を脅かす不穏な影が現れ、波乱の予感が――。

ドラひよ ~異世界の竜は私のなでなでに弱いみたいです~

ドラひよ ~異世界の竜は私のなでなでに弱いみたいです~

 物語にはまだ明かされていない設定が多く、ここは一体どのような世界なのか、そしてヴェルが警戒する「竜狩り」とは何者なのかといったいくつもの謎が残されている。キュートな子育てロマンスがこの先にどこへ向かうのか、今後の展開からも目が離せない。

文=嵯峨景子

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