キレ散らかす長男。受験でイラつく次男。息子たちの反抗期に奮闘する母の姿を描いたコミックエッセイ『ナイフみたいにとがってら』

マンガ

更新日:2023/11/25

ナイフみたいにとがってら 反抗期男子観察日記
ナイフみたいにとがってら 反抗期男子観察日記』(月野まる/KADOKAWA)

 子育てをしている親に悩みは尽きない。教育費や発育の心配、しつけ、仕事との両立…挙げればきりがないが、子どもの反抗期への対応に悩むひとも多いのではないだろうか。中学生、高校生になると本格的な反抗期を迎える可能性が高い。そのとき私たち親はどうふるまうべきなのか。

 子どもの反抗期を描いた『ナイフみたいにとがってら 反抗期男子観察日記』(月野まる/KADOKAWA)。本作はタイトル通り、反抗期の息子ふたりとの日々を綴ったコミックエッセイだ。家庭内のイライラや揉め事のようなエピソードがコミカルに描かれている。さらに「思春期男子あるある」も満載。

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 とにかくこの作品は、思春期の子どもをもつ親なら「そうそう!」と共感できるエピソードばかり。また、これから反抗期を迎えるかもしれない子をもつ親が“そのとき”どう対応するかを考えさせられる内容にもなっている。

キレ散らかす長男!受験でイライラピリピリする次男!母の明日はどっちだ?

 著者の月野まる氏にはドSな“俺様系”長男と天然でマイペースな次男、ふたりの息子がいる。

「おいババァ!」「親!メシ作って!」月野氏の高校生の長男は反抗期真っ只中。家に帰ってきて「ただいま」も言わないのだ。家に入ってくるなりバッグを放り出し、制服もくしゃくしゃのまま、叱りつければキレて反抗してくる。弁当箱も翌日まで出さず自分の部屋もぐちゃぐちゃで散らかしっぱなし……そのとき母の対応は?

ナイフみたいにとがってら 反抗期男子観察日記

「いちいちうるせぇ」「うぜぇ」とガンガン言ってくる長男に最初はショックを受けつつ、負けじと反論してバトっていた月野氏。ただそのうちそんな暴言も適当にあしらうように。

ナイフみたいにとがってら 反抗期男子観察日記

 一方、お調子者の次男。少し甘えん坊な性格で、中学の途中まで、母と一緒に寝たがることも。しかし、そんな彼にもそのときはやってくる。まずは受験。当然のことながらイライラすることが増えてきて――!?

ナイフみたいにとがってら 反抗期男子観察日記

 母と言い合いになる次男。普段と違うキツい次男に対して思わず応戦してしまう月野氏。バトってしまった挙句、ムッとした次男は長男と同じ言葉を口にする「ババァ!」。

ナイフみたいにとがってら 反抗期男子観察日記

 また、イライラして行き詰まったときの月野氏の行動も描かれている。負の感情に負けないよう、逃げ出す母。乳幼児期とは違い子どもはもう自分でほとんどのことができてしまうのだから逃げていいのである。時間や距離を置いて関係をリフレッシュするのだ。

ナイフみたいにとがってら 反抗期男子観察日記

これから反抗期の子をもつ親に!笑えて泣けるエピソード満載

『ナイフみたいにとがってら』の3巻までで、月野氏の息子たちの反抗期はほぼ終わる。ただ彼らが成長した4巻では、長男の就職活動と次男の大学受験が重なり、そのイライラに対峙する母……という月野家のドタバタが描かれていく。不機嫌な子どもの発散行動は反抗期のころと大差はないものの、母にキレずに怒鳴らないのは多少の成長だろうか。大人になって語彙が増えたぶん、辛辣な言葉を投げてくるが……。

ナイフみたいにとがってら 反抗期男子観察日記

 子どもたちをクールかつ温かく見守る月野氏。ときにはイラつき、ときにはバトってしまうが、キレる彼らを上手に受け流し、たまには家から逃げ出しつつも愛情をもって反抗期の子どもたちに向き合う。子どもたちの成長や変化も感動的で、読んでいてほろりとさせられる。まさに笑えて泣けるコミックエッセイなのだ。

 これは子どもが絶賛反抗期中の人、子育て中の全ての人に参考になるのではないだろうか。本稿のライターは、子どもがまだ小学校の低学年。イヤイヤ期など比較にならないであろう反抗期はこれから。本書を読んでいると親としてできるだけのことをやってみようという気持ちになる。最後に月野氏の言葉を借りると、反抗期もやがて懐かしく思うときがくる、愛しい思い出のひとつになるのだから。

ナイフみたいにとがってら 反抗期男子観察日記

文=古林恭

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