どんな試練にも「逃れる道」がある。現代の女性に送る、生きづらさがスッと消える48のメッセージ

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公開日:2023/12/12

逃げられる人になりなさい
逃げられる人になりなさい』(神垣しおり/飛鳥新社)

 どんなに苦しくても、立ち止まらず、ただ真っ直ぐ突き進むことだけが正解だと思い込んできた。だが、ふと疑問に思う。本当に諦めないことだけが正しいのだろうか。自分の心はこんなに悲鳴をあげているというのに。

 そんな生きづらさを感じているときに、まるで頑張りすぎてきた私たちをそっと抱きしめてくれるかのような本が『逃げられる人になりなさい』(神垣しおり/飛鳥新社)だ。『置かれた場所で咲きなさい』(渡辺和子/幻冬舎)の著者、シスター渡辺和子の教えを受けた、広島にあるノートルダム清心中・高等学校現校長、神垣しおりさんによるこの本は、つらい、苦しいことのとらえ方からコミュニケーション術、品格、生と死まで、これからを生きる女性の強い味方になるに違いない一冊だ。

 この本に込められた48のメッセージはなんて温かいのだろう。「弱さの中にこそ、強さがある」「試練は喜ぶべきもの」「進歩は傷つく言葉から生まれる」「コミュニケーションは失敗からはじまる」「かなわない夢をもち続ける」「相手を思いやることを品格という」……。聖書の記述や、著者自身の半生から見出された言葉は、力強く、そして、優しい。

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どんな時も、「逃れる道」は備わっている

 特に印象に残るのは、タイトルにもなっている「逃げる」ことについての言葉だ。元来自分に自信がない性格だという神垣さんは、「逃れる道も備わっている」という聖書の言葉を心の支えにしているのだという。

「神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます」(コリントの信徒への手紙一 10章 13節)。

 前半の「神は乗り越えられる試練しか与えない」という言葉はよく聞くが、「逃れる道も備わっている」と続くとは、知らない人が多いのではないだろうか。人は何かを選択するとき、「この道で頑張るしかない」と考えると逃げ場がなくなってしまう。だが、どんなときも進む道はひとつではなく、さまざまな道がある。今いる場所で心から笑顔になれないのなら、無理に立ち向かおうとせず、逃げることもひとつの道。そう知っていれば、不思議なほど、安心して前を向くことができるだろう。

受け入れることで道はひらかれる

 神垣さんによれば、実は聖母マリアも、あの有名な「受胎告知」の場面でキリストの母になることを拒否しているのだという。降臨した天使に「あなたは、キリストの母になるのだ」と告げられたマリアは一度はそれを拒んだ。だが、その後、落ち着きを取り戻し、「Let It Be」、「お言葉どおりになりますように」と言った。ジョン・レノンの歌で有名な「Let It Be」は、キリストの母になるという運命を受け入れたとき、マリアの心の中から湧いてきた言葉なのだそうだ。

 聖母マリアでさえ、みずからの運命を受け入れるために、考え、咀嚼する時間が必要だったと考えると、少し救われる思いがする。なにかを依頼されたとき、自分には無理だと感じたり気が進まなかったりしても、実際に、断るのはためらわれるもの。だが、自分の心を正直に感じ、もし答えが「NO」なら、その感覚に素直に従い、一度は相手に問い返してもいい。それでもなお、やるべきだと思うのなら、それを受け止め、承諾してみる。自分の素直な心と向き合いながら、運命と向き合っていくと、新たな世界や可能性が広がるのだと神垣さんは教えてくれる。

 弱い自分をもっと認めてあげていいのだ。時には立ち止まっていいのだ。そうすることで、かえって、自分だけの道を進むことができる。この本を読むと、今をおおらかに受け入れ、自分の心をいたわり、慈しむ方法が分かる。何だか心がスッと軽くなってくる。今、頑張りすぎてしまっている人も、自分を追い込みすぎて身動きが取れなくなっている人も。きっとこの本の言葉は、あなたにとっても大きな支えとなるだろう。

文=アサトーミナミ

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