離れて暮らす高齢親のサポートは「同居」か「施設入所」だけではない。手軽かつ安価に導入できる最新見守りのヒント

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更新日:2024/2/1

親が心配な人の見守りテック スマホでできるスマートホーム化の極意
親が心配な人の見守りテック スマホでできるスマートホーム化の極意』(和田亜希子/日経BP)

 離れて暮らす高齢の親。まだ元気で身の回りのことも自分でやれているけれど、これから認知症の症状が出てきたり、家の中で倒れて助けを呼べなくなってしまったりしたら……。そんな不安を持っている40~50代の人は少なくないだろう。

 同居はハードルが高いが、施設に入れるのも気が引ける。本人も住み慣れた家から離れたがらないだろう。お互い今の居住環境のまま、親を見守ることはできないだろうか。

 そんな人におすすめしたい本が『親が心配な人の見守りテック スマホでできるスマートホーム化の極意』(和田亜希子/日経BP)だ。著者の和田さんは、築40年の一戸建て実家をDIYでスマートホーム化した体験をもとに、離れて暮らす高齢親の見守りやサポートに役立つ方法を提案するサイト「見守りテック情報館」を運営している。

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 そんな和田さんが2023年11月に出版した本書は、豊富な写真やイラスト、マンガとともにスマートホーム化の極意をまとめた一冊だ。ITリテラシーが高くなくても理解しやすく、読み終わるころには、スマホを使った見守りのために必要なもの、コストの目安、具体的な導入方法、お互いがハッピーになれるコミュニケーションのコツなどがわかるだろう。

見守りも「リモート」でできる時代

 スマートホームと聞くと、最新技術を用いた住宅や、IoT家電が備わったハイクラスのマンションをイメージするかもしれない。しかし、本書では、ネットワークカメラやスマートリモコンを、スマートスピーカーなどを使うことで、手軽かつ安価な導入ができる「後付け型のスマートホーム」の作り方を紹介している。

 たとえば、見守りの「目」となるネットワークカメラは、数千円で導入可能だ。動体を検知して自動的に前後の映像を自動録画する機能がついているので、親がなかなか電話に出てくれなくてもハラハラせずに済む。安否確認だけでなく、生活の状態も把握できる。

 スマートリモコンという小さな箱を部屋の一角に設置すれば、実家のエアコンやテレビ、その他さまざまな家電製品を離れた場所から操作することが可能だ。最新のIoT家電に買い替えずとも、今ある家電を遠隔で操作できるというのは、知らない人には驚きだろう。加齢により暑さを感じにくくなった高齢者の熱中症を予防するのにも役立つ。

 カメラ付きで簡単にビデオ通話ができるスマートディスプレイがあれば、お互いの顔を見ながらご飯を食べるような「バーチャル同居」感覚を味わえる。AIアシスタントを使えば、「今日の予定は?」「今週の予定は?」と聞くと音声とテキストで示してくれて、さながらプライベート秘書だ。何十回同じことを聞いても嫌な顔をしないので、認知症の初期症状でスケジュール管理が難しくなってきた人にとって非常に頼れる存在になるだろう。

必要なものやコスト、やり方がすべてわかる

 スマートホーム化に役立つ機器にはさまざまなものがあり、2種類以上を組み合わせるとできることの幅もぐっと広がる。しかし、初めての人は「何が必要なのか」「お金はどれくらいかかるのか」「難しくないのか」「安全なのか」といった疑問や不安を持つだろう。

 本書を読むと、「何を設置すると、どんなことができるようになるのか」「どのくらいのコストでそれが実現できるのか」「どういう使い方をするとよいのか」などがよくわかる。導入方法だけでなく、親の心理的な抵抗をなくすための声かけの仕方、お互いにストレスがたまらないコミュニケーションの方法も書かれているので、とても真似しやすい。

 現代は、無理なく見守りができる便利な製品が登場しており、わずかな手間さえかければ簡単に利用できるようになる。「同居」か「施設入所」の二者択一ではなく、「スマホ見守り」という有効な選択肢が生まれたわけだ。見守る側と見守られる側双方の不安やストレスを取り除いてくれ、QOLを高めてくれる“文明の利器”を使わない手はない。

「うちの親は元気だし、見守りなんてまだ必要ないでしょ」と思うかもしれないが、誰にも「老い」は訪れる。個人差はあるが、80代になると言動が少しおかしくなったり、骨折をきっかけに認知症が進んでしまったりすることも多いという。転ばぬ先の杖ではないが、いざというときに慌てなくて済むよう、情報収集を始めておくに越したことはない。

 最初の機器設置は自分が出向いて行う必要があるので、年末年始に実家に帰省する予定があるなら絶好のタイミングだ。本書を読んで、真似できそうなところから始めてみると、ちょっとの手間で安心を手に入れることができるだろう。

文=ayan

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