事故で料理に巻き込まれるエビに「軽いやけどでよかったね~」強いトラに憧れるホワイトタイガーと、ちょっとドジなエビのほんわかな日常を描いたコミック

マンガ

公開日:2023/12/21

ホワイトタイガーとブラックタイガー
『ホワイトタイガーとブラックタイガー』(にとりささみ/KADOKAWA)

 ホワイトタイガーはトラだけど、ブラックタイガーはエビである。ここまで呼んでピンときた方は、にとりささみ氏によるマンガ『ホワイトタイガーとブラックタイガー』(KADOKAWA)の読者だろうと思われる。

 知らない方のために少し解説すると、『ホワイトタイガーとブラックタイガー』は、強いトラに憧れるホワイトタイガーの子どもと前向きだけどちょっとドジなエビ(ブラックタイガー)のほんわか友情物語である。

 ひょんなことから知り合ったふたり(?)であるが、エビであるうえにドジなブラックタイガーはすぐに事故でお料理にされてしまう。エビフライ、エビ天、エビチャーハンは序の口、時にはパン工場を見学していてベーコンエピに巻き込まれ(「ベーコンエピに巻き込まれる」ってなんだ……)ベーコンエビになってしまうこともある。小さな命のピンチは枚挙に暇がない。

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 でも、そんなピンチを助けてくれる心強い存在もいる。それが、うさぎ病院のお医者さん・うさぎ先生だ。うさぎ先生の手にかかれば、診断名「軽いやけどですね~」で命の危機を脱することができるのだ。ちなみに、この本にはブラックタイガーが事故でなってしまった料理のレシピまで掲載されているだからそのブラックジョークっぷりに笑ってしまう。

 うさぎ先生は超優秀なお医者さんだが、ホワイトタイガーとブラックタイガーがいつケガをしてもすぐに治療するため、過保護&クレイジーなところがあるのが玉に瑕。ときに不審者然としてしまううさぎ先生の行動に目を光らせているのが、交番勤務の犬のおまわりさんだ。

 ホワイトタイガーとブラックタイガーを見守るスーパードクターのうさぎ先生も、犬のおまわりさんのことは勝手な行動やちょっとした意地悪でめちゃくちゃ振り回している。その様が愛おしく、子どもふたりを優しく見守るうさぎと犬の関係を、読者が優しく見守っている側面もあるのだ。なお、うさぎ先生はこの本に掲載されているある回で女性だということが判明している。優秀でクレイジーな女医とそれに振り回される公務員のおまわりさん……推せる。

 登場するキャラクターたちの愛らしさに、すでにグッズ展開もされておりそれは当然頷けることなのだが、マンガの内容はかわいいだけにとどまらない。有名な物語のオマージュやネットミームなどがふとした瞬間に盛り込まれているため、読書家やオタクが読んでもクスッと楽しい。例えば、うさぎ先生の両親の悲劇、ホワイトタイガーくんがぐるぐる回ると変化してしまう食べ物などなど、元ネタを探すのも楽しいのだ。

 寒くて外に出るのも億劫な日は、愛らしくも個性強めの生き物たちが繰り広げる平和な物語にひたってみてはいかがだろうか。

文=須川奈津江