辞めたい…けど辞められないブラック企業からの解放! パワハラ・過重労働・不当賃金・極悪ノルマに退職代行が立ち向かう

マンガ

PR公開日:2024/1/22

さよならブラック企業 働く人の最後の砦「退職代行」
さよならブラック企業 働く人の最後の砦「退職代行」』(外本ケンセイ/少年画報社)

 退職代行、というサービスが一般的に知られるようになったのはこの数年のことだが、最初は「そんなことくらい自分でやれ」という声も多かったように思う。だが、「それくらい」のことができないほど追い詰められているから、お金を払ってでも他人の手を借りなければ今いる場所から抜け出せないから、頼むのである。「そんなことくらい」と言える人はたぶん幸せで、世の中には「辞める」という選択肢を思い浮かべることすらできないほど、会社に管理・支配されてしまっている人たちがいるのだということを、マンガ『さよならブラック企業 働く人の最後の砦「退職代行」』(外本ケンセイ/少年画報社)を読んでいると感じる。

 主人公・水城リコの仕事は、大手不動産会社の電話営業。嫌われ、罵られ、クレームを受けながらも、上司からの圧力で休むことは許されず、断られても断られても電話をかけて、休日出勤も強いられる。「逃げ出しても何も変わらない」「耐え続ければきっと」と自分に言い聞かせていたある日、電車でぼろぼろと泣きだしてしまった彼女に手を差し伸べたのが、偶然乗り合わせた弁護士の不知火基子だった。

さよならブラック企業 働く人の最後の砦「退職代行」

 不知火から、自分を殺さないために無数の選択肢の中から自分で道を選ばなきゃいけない、と教えられたリコは、会社の上司にはじめて反抗する。もともとの勝気で正義感の強い性格を彼女が取り戻すことができたのは、「居場所はここしかない」という洗脳から解き放たれたからだ。他にも道がある、と気づくために必要なのは、第三者のまなざしに触れること。それはおそらく家族や友達ではだめで、社員が逃げ出せない仕組みをつくって囲い込む会社に対抗するには、全然関係のない他人、それも法に基づく知識を知っている人でなくてはならないことも多いのだろう、と思う。

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さよならブラック企業 働く人の最後の砦「退職代行」

 派遣社員だったリコは会社から契約を打ち切られ、不知火のつとめる法律事務所で、事務員として働くことになる。不知火やほかの弁護士とともに、リコは依頼人と出会い、数々のブラック企業と対峙することになるのだが、安易に「スカッと」するわけではないのが、本作の魅力である。

 依頼人を最悪の場所から救い出すことができたとして、ブラック企業そのものがなくなるわけではない。仮に企業の暗部を暴いて失墜させたとして、そこで働く社員たちが必ずしも救われるわけではない。そもそも、圧力をかけてくる上司たちも、会社に支配され洗脳されている一部なのだ。それでも、たった一人の社員を救うことが、彼女を追い詰めた根源を明らかにすることが、その会社で働く別の誰かを救うことに繋がっていく。会社に残り、他者を追い詰めることで自分の地位を担保する選択ではなく、自分を守ると同時に、二度と同じことを繰り返させないための戦いを選択することが必要なのだと、リコの成長を通じても感じる。

さよならブラック企業 働く人の最後の砦「退職代行」

 リコや不知火をはじめとする法律事務所の人たちもまた、傷を抱え、もがきながら選択し続けている。だからこそ、その戦いはよりいっそう読む人の胸を打ち、新たな道を模索する力を与えてくれるのだ。

文=立花もも

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