【今夜10時放送】シリーズ2作目は、前作以上の充実感。前科者の2人をひっそりと応援しながら読む

小説・エッセイ

更新日:2013/2/26

すれ違う背中を

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 新潮社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:乃南アサ 価格:626円

※最新の価格はストアでご確認ください。

ドラマ化された『いつか陽のあたる場所で』の続編。乃南アサさんの作品にはハズレがないですが、この2作品の完成度は高い!

芭子と綾香。2人は実の家族以上に親しく、お互いを助け合って生きている「前科者」。それぞれに犯した罪は違うものの、出所してから世間に目立たないように生きてゆくことを強いられる状況は同じ。前作でゆっくりとしっかりと見せていった過去を持つ女2人の地味な生活から、2作目は段々と読み物として盛り上がりが出てくる感覚です。

advertisement

以前の職場を追われ、失業中の日々から一転、ペットショップに勤めるようになってからどんどんと変わってゆく芭子の日常。刑務所で習った裁縫が図らずも功を奏して、自分の手に職を持ち、日陰人生を決めていた彼女に少しずつ将来への希望が出てくるあたり、とてもいい。

そして前科者の芭子に段々と女性としての好感度が加わり、地域を守る若い警官や、大学関係者という謎の男と段々と親しくなっていく。もしくは行きつけの飲み屋ができて、女友達ができたり。前科者でなければ、こうした展開はあまり特筆に値しないものなのかもしれませんが、綾香と芭子の過去ゆえ、こうして人とのつながりができ、彼女たちが疑心暗鬼に人間関係を怖々広げてゆくあたり、とても新鮮。読者はあっという間にこの2人の女性の側から見た世間を共有してゆきます。

一般人が普通にしていることが、前科者にはできない不便。日々の心の葛藤。制限のある生活の中で、生き甲斐を見つけてゆく様。そんな様子が章立てごとにきめ細やかに描かれていて、前作以上に読み応えあり。ドラマとあわせて読んでおきたい1冊です。


男で失敗し、前科がある芭子。出所してからはひたすら地味な生活を

前科者になる前にはなんともなかった出来事が、出所後には最大の喜びになったり

過去を隠したい芭子のところに、出自のわからない男がやってくるというどきどきな設定