「どうしてわかってくれないの?」と思う原因は自分にあり。違いを受け止めることで180度変わる人間関係

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/22

性格が合わないんじゃなくて話がかみ合っていないから
『性格が合わないんじゃなくて話がかみ合っていないから』(稲場真由美/WAVE出版)

「何でそんなことを?」と理解に苦しんだり、「何でわかってくれないの?」ともどかしい思いをしたり。どんなに自分は理解のある人間だと思っていても、このような経験はゼロではないはずです。

 関係の悪化や不平、不満の噴出につながりかねない摩擦をどのように減らすことができるか。『性格が合わないんじゃなくて話がかみ合っていないから』(WAVE出版)の著者・稲場真由美氏は、16年かけて「性格統計学」を体系化する中で解決に取り組んできました。

 稲場氏の基本的なスタンスは「相手を変えることは難しいけれども、自分の受け止め方は変えられる」「自分の頭の中と他者の頭の中には、違う脳みそが入っている」というものです。まずは自分を知る。そして、相手を知る。そうすると、両者の違いが見えてくる。その違いを受け止めて自分の行動と態度をコントロールできれば、相手と共有する場や時間の流れを良くすることができる、と述べています。

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 相手軸か自分軸か、計画重視か臨機応変か。これらの基準をもとに、稲場氏は人の行動指針を以下のように分類しています。

・ピース・プランニング(相手軸×計画重視)
・ピース・フレキシブル(相手軸×臨機応変)
・ロジカル(自分軸×計画重視)
・ビジョン(自分軸×臨機応変)

 一人につき一つしかあてはまらないわけではありません。たとえば、仕事だとものすごく計画的だけど、プライベートとなると一転してギリギリ人間になるというように、場や状況に応じて行動が変わるということは往々にしてあります。

 本書はそうした人の思考の複雑さは踏まえながらも、あくまで特定のシチュエーションにおいて異なるタイプの人がそれぞれどのように考えているかを、イラストを交えながら説明しています。たとえば「皿洗いをしたが、感謝されず逆に叱られた」という状況ではこのように分析がなされています。

ロジカルは設定している基準が高く、「やるならここまでやってほしい」と、人にもその基準を求めてしまうんですね。また、自分のやり方を崩すことも嫌います。
じゃあ、手を出さないほうがいいのかと手伝わなくなると、それはそれで「やってくれない」と文句が出てきます。「わがまま!」と感じるかもしれませんが、ロジカルとうまくやっていこうと思う人は、ぜひ「あなたのやり方ってあるの? 教えて」と言ってあげてください。

 そもそも、感謝されるために皿洗いをするのかという議論もあるかもしれませんが、あくまで本書は「何がどう噛み合っていないのか」を見るための本なので、もし書かれているシチュエーションにピンと来なかったとしても、双方の心理を予想して楽しんで読み進めることができると思います。次は「先に約束していたのに、後から入った用事を優先された」というシチュエーションも見てみましょう。

ビジョンやピース・フレキシブル(臨機応変タイプ)は、めったに会えない人が「会える?」と言ってきたら、スケジュールを変更してどうにか会えるように調整しようとするでしょう。先約をないがしろにしているわけではありません。計画重視タイプの人よりは先約優先度が低いということだけです。

「自分と相手は同じである」と考えていると「約束を破られた」と思ってしまうところを、「こう考える人もいる」と知れば、落ち着いて受け止めることができるといいます。「そう考えていたのか」「こう言えばいいのか」と、必ずいくつかは、日常ですぐ実践できる発見があるはずです。

文=神保慶政

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