「生理前とかいつもこうなるもんね」。発達障害の夫と心が通わず、カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話

マンガ

公開日:2024/2/15

夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話
夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話』(アゴ山:企画・原案、鳥頭ゆば:著/KADOKAWA)

「パートナーと分かり合えない」「何を言っても伝わらない」「孤独」——近年、「カサンドラ症候群」に注目が集まっている。「カサンドラ症候群」とは、発達障害特性のあるパートナーを持つ人が、パートナーとうまくコミュニケーションが取れず、苦しんでいる状態。「大人の発達障害」が話題になる中で、「カサンドラ症候群」という概念も少しずつ認知され始めてきたらしい。

夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話』(アゴ山:企画・原案、鳥頭ゆば:著/KADOKAWA)には、「カサンドラ症候群」になってしまった人の途方もない孤独が描き出されている。本作は実際に「カサンドラ」状態になった当事者が苦悩し、夫と離婚するまでを赤裸々に描いたコミックエッセイ。「もしかして、私はカサンドラ症候群なのかも」と悩んでいる人はもちろんのこと、その名を知らなかったという人にも当事者の苦しみを、是非ともこの本で知ってほしい。

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 この物語の主人公・アコは、元々笑顔の絶えない、明るい人物だった。夫・ユーマは昔から天然キャラで穏やかな人。結婚生活は平和そのものだったが、アコはユーマとともに暮らすうちに違和感を覚え、子どもが生まれると、それは耐え難いものになっていく。

夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話

 ユーマは無表情。常に受け身だが、疑り深く、突然頑固になることもある。たとえば、子どもの発達を不安に思ったアコの相談に対し、ユーマは「子どもを発達障害にさせたいの?」などと的外れな発言をし、頑なに病院に連れて行くことを拒み、診断を受けた後も、その診断を信じようとしない。

 また、ユーマは「察する」「気持ちを汲み取る」ということをしない。アコが風邪を引いて寝込んでしまった時には、アコが「今日はご飯無理だからお弁当でも買ってきて…」と頼むと、ユーマは「言われなかったから」と、子どものことは考えずに、自分のものだけを買って一人でご飯を食べる。アコが怒れば、ユーマは「俺が悪かったよ」と謝るが、それはその場を収めるために言っているだけ。現に「アコのことよく分かってるし」「生理前とかいつもこうなるもんね」など、デリカシーのない、的外れな発言をする。ユーマとは話が通じない。何を相談しても、分かり合えない。いつも明るかったはずのアコは、次第に「消えたい」とさえ思うようになっていった。

夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話

夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話

夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話

 はたから見れば「物静かないい人」で、DVもモラハラもない。だから、周囲に相談しても、夫に対する違和感は伝わりづらい。「贅沢な悩み」だと諭されることだってある。そんなこの作品で描き出された「カサンドラ症候群」の孤独は、身につまされる。「コミュニケーションが苦手」「空気が読めない」「受け身」「一方的に自分の関心ごとを話し続けてしまう」などという、大人の発達障害の特徴が実体験として描かれているから、「これは自分の夫と同じ」「この悩み、分かる……」と共感させられる人も多いに違いない。

 では、自分が「カサンドラ症候群」だと気づいた時にはどうしたらいいのか。本書では、カサンドラ症候群専門カウンセラー・真行結子先生との特別対談「カサンドラ症候群への対処法と夫婦の幸せのあり方」が収録されている。発達障害特性のあるパートナーと、どうやってコミュニケーションを取ればいいのか。夫婦関係を修復することはできるのか。それが難しい場合、どうすれば円満離婚できるのか。実体験と、専門家の意見をあわせて知れば、「自分はどうすればいいのか」を考えるヒントとなるだろう。

 もし、あなたが「カサンドラ症候群なのかも」と悩んでいるのならば、この本ほど、強い味方となるものはない。アコは「カサンドラ症候群」というものを知ったことで、全てが腑に落ち、心がラクになったという。同じように、この本のエピソードと、専門家からのアドバイスは、「カサンドラ」状態でいる人にとって間違いなく救いになる。同じことに悩んでいる人は一人ではない。そんな実感は、あなたの支えになるだろう。

文=アサトーミナミ

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