猫が普通に学校に行く世界!? お姉さんと個性豊かな猫たちのコミカルでほっこりする4コマ漫画『トラと陽子』

マンガ

公開日:2024/3/7

トラと陽子
トラと陽子』(黒崎冬子/KADOKAWA)

 猫が好きで、一風変わった猫漫画が読みたい、という人にお勧めしたいのが、黒崎冬子が描く『トラと陽子』(KADOKAWA)だ。

 この作品は、主人公の陽子が、生まれてすぐに母親を失くした子猫のトラと暮らし始めるところから始まる。最初は慣れずに怯えていたトラも、いつも愛情を全力で注いでくれる陽子に懐くようになり、気がつけばすっかり仲良しに。

advertisement

トラと陽子

 プロローグだけ読めば、猫好きの優しい女性とその猫のほっこりとした漫画だと感じるだろう。しかし、その後の展開がかなりユニークなのがこの作品の面白いところだ。

 まず、この世界にはねこ学校というものがあり、猫は当たり前のように学校に通っている。猫たちは宿題をして、同じ学校のクラスメイトと遊ぶ。まるで人間の子供のようだ。言葉は喋らないが、作中では人間と猫は意思疎通ができていて、お互いにコミュニケーションが取れている。

トラと陽子

 時には、飼い主が恋しくなり、学校をサボって会社に来てしまうこともある。そんなトラをむしろ褒めるのが陽子らしい。基本的に人間は猫たちの意志を何よりも尊重し、結構な全肯定で接している。それがこの作品のゆるい雰囲気にも繋がっていて、読んでいると心がじわじわと癒される感覚がある。温かいコミュニケーションばかりの世界だ。

トラと陽子

 ちなみに猫は、学校に行くだけではなく、バイトもしたりする。

トラと陽子

 猫だけではなく、ゾンビやお化けも出てくる(?)。お化けと一緒に川の字で寝るシーンが愛らしい。

トラと陽子

 作中ではトラ以外にも、素直じゃないわるるや、気が強いケーキ、優しいブチ、のんびり屋のタヌ、など4匹の個性豊かな猫が登場する。

トラと陽子

 猫だけではなく、犬もいる。ハニーチュロ太郎くんは、飼い主に似て強面だが、実は気遣いができる優しい犬だ。

トラと陽子

 巻末には書き下ろしも入っており、それぞれの猫たちがどのようにしてお姉さんたちと出会い、ともに暮らすようになったかがわかる過去編が描かれている。ユニークな猫たちに負けず劣らず、お姉さんたちも個性豊かだ。出会うべくして出会ったパートナーのような感じがして、この過去編を読むとよりそれぞれのコンビが愛おしく感じる。

トラと陽子

 猫たちが可愛く、その子たちを可愛がるお姉さんたちも、なんだか愛らしい。いい人しか出てこないから、心がざわざわすることもない。一貫して優しくて温かい世界だから、読んでいてホッとする。自分も誰かに優しくしたくなる。ちょっと懐かしい絵柄のタッチも相まって、なんだか不思議な魅力のある作品だ。

文=園田もなか

あわせて読みたい