アニメ化『妖怪学校の先生はじめました!』。気弱な新米教師・安倍晴明と妖怪の絡みが痛快なドタバタコメディ

マンガ

公開日:2024/3/11

妖怪学校の先生はじめました!
妖怪学校の先生はじめました!』(田中まい/スクウェア・エニックス)

 昨今、教師の労働時間や就労範囲について疑問を投げかける記事を多く見る。働き方や長時間労働に悩み、苦渋の決断で教師の道を離れる人がいる一方、大変なことはあるものの教師の仕事は楽しいと感じる人もいる。もちろん、どちらが正解というわけではない。ただ本記事で紹介する『妖怪学校の先生はじめました!』(田中まい/スクウェア・エニックス)の主人公には「そんな簡単に辞めないで、多くの教師が感じる醍醐味を味わってほしい」と思ってしまった。

 物語の舞台は、東京から船で10時間のところにある孤島・百鬼学園島。主人公の安倍晴明は、その島にある百鬼学園に赴任することになった教師だ。もともと、公立高校の教師だった彼だが、赴任後わずか30分で不良に絡まれ、学校から逃亡。以来1年間実家に引きこもる生活をしていた。そんな晴明だったが、充電期間を経て心機一転、情熱に満ち溢れた高校教師としての道を歩み始めるつもりだった。

 しかし、理想と現実はかなりかけ離れていた……。なんと彼が担任するクラスは、がしゃどくろや、ろくろ首、疫病神、のっぺら坊、ひとつ目小僧など日本のメジャーな妖怪が集まるクラスだったのだ。そもそも百鬼学園に人間の教師や生徒は誰一人としていない様子……。事情を知り、さっそく「教師を辞めてパン屋になる……!」とヘタレ込む晴明だが、学園長から「私はあなたに期待しています」と背中を押され、渋々担任を続けることに。

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 妖怪作品といえば、『ゲゲゲの鬼太郎』のぬりかべや一反木綿のように、ほとんど人間のなりをしていないキャラクターをイメージしがちだが、本作は学園物語でもあるため、妖怪は人型で制服を着用しているため、一見すると妖怪っぽさを感じない。ただ生徒たちがひとたび妖術を使うと一気に妖怪マンガに様変わりする。このギャップが作品の魅力といえるだろう。

 また晴明の隠れた能力にも注目してほしい。学園長が「期待している」と伝えたのは、彼の生い立ちにある。1000年前、妖怪たちが表立って活動していた時代、人間に悪さをする妖怪たちを退魔できる力を持った人間の末裔が晴明だというのだ。確かに晴明は絶体絶命のピンチに追い込まれたとき、無意識に魔法陣が発動して生徒のいたずらを退ける。学園長曰く、その力は人間には無効だが、妖怪には最強クラスの効果を発揮するとのこと。なぜ学園長は、自分たちの敵になり得る力を持つ晴明を近くに置いておこうとするのだろうか。普通なら遠ざけておきたいはずだが……? 真相はきっと2巻以降で語られるはずだ。

 ちなみに本作は、2024年にアニメ化が決定している。妖怪と自他ともに認めるヘタレの晴明のドタバタコメディをいち早くチェックしたい人は先に原作を読んでみていただきたい。そしてぜひ、晴明を精一杯応援してあげてほしい。

文=トヤカン

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