大河ドラマ「光る君へ」で平安時代の暮らしが気になった人必見! 装束・調度品・建物を豊富な写真で再現『あたらしい平安文化の教科書』

文芸・カルチャー

PR公開日:2024/3/3

あたらしい平安文化の教科書 平安王朝文学期の文化がビジュアルで楽しくわかる、リアルな暮らしと風俗
あたらしい平安文化の教科書 平安王朝文学期の文化がビジュアルで楽しくわかる、リアルな暮らしと風俗』(承香院/翔泳社)

 学生時代、授業中に『国語便覧』を読むのが好きだった。特に好きだったのは「平安時代」のページ。十二単の再現写真や解説、屏風や几帳、御簾などの調度品の写真資料、絵巻物の抜粋をボーッと眺めては、『源氏物語』や『枕草子』の華やかな世界への想像を膨らませていた。だが、大河ドラマ「光る君へ」に合わせて、今、改めて『国語便覧』を引っ張り出してみると、何だか少し歯痒く感じる。「もっと平安時代のページがほしいのに。それも、もっと当時の暮らし、特に、装束について知りたいのに……」。平安時代への興味がつきないがため、つい物足りなさを感じてしまうのだ。

「もっと平安時代について知りたい」。そう思っている人にオススメなのが、『あたらしい平安文化の教科書 平安王朝文学期の文化がビジュアルで楽しくわかる、リアルな暮らしと風俗』(承香院/翔泳社)だ。この本では、「源氏物語絵巻」や「年中行事絵巻」など、平安時代の絵巻物に描かれた様々な場面を、写真で再現。謎の平安貴族「承香院」の暮らしを軸に織りなす「承香院絵巻」として、平安の暮らしを蘇らせている。それも、本書に掲載されている装束は、著者が1着1着調査報告などを基に裁断図から書き起こして縫われたものだというから、その情熱に圧倒されずにいられない。豊富な写真と解説で平安時代の暮らしがリアルに分かる、平安文化ファンにはたまらない1冊なのだ。

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平安文化束帯

本当に蹴鞠をして、牛車に乗る再現力の高さ

平安文化 蹴鞠

 本書の第2章で紹介される再現力の高さに驚いた。『国語便覧』にしろ、日本史の資料集にしろ、平安時代について扱われているページは普通は限られる。イラストで解説されたところも少なくはなく、当時を再現した写真はあっても数枚程度だろうが、この本は、違う。装束にしろ、調度品にしろ、建物にしろ、CGなどではなく全てが再現された実物 。絵巻物で描かれた30以上の場面を、それぞれ何枚もの写真で、様々な角度から再現してみせるのだ。だから、貴族たちは本当に蹴鞠をしているし、牛車に乗っている。御簾越しの男女にはこれから何かが始まりそうな緊張感があり、釣殿での添臥は何ともエロティックだ。

 さらには、儀式のために奔走する下級官人や侍廊でくつろぐ家司、女君の髪を櫛でとかす女房や、柱に寄りかかって少しリラックスしながら、物語を楽しむ貴族女性たちなど、マニアックな再現写真があるのも良い。「そうか。この時代の人も、私たちのようにごく普通の日々を生きていたのか」。再現された写真を見ていると、そんな当たり前のことを強く実感できる。

平安文化 主と女房の恋

「平安の人がごろんと寝そべる姿」まで観察し放題

 もちろんこの本は、平安文化の基礎知識の解説も詳しい。特に、装束の解説では、男女問わず、季節問わず、貴族から庶民まで、様々な装束が紹介されていて、「束帯姿は凛としていてカッコいいな」「小袿姿はセレブ感満載で、さすがは上流階級の装束」などと、その一つ一つに感嘆の声をあげたくなる。

平安文化 小袿姿

 さらに驚かされるのが、写真の豊富さ。各装束について、絵巻物を見ている姿や、色鮮やかな檜扇や袖で顔を隠している姿、さらにはごろんと寝そべる姿まで、様々なポーズ、アングルの写真が掲載されているから、観察し放題。実際に着て動き、絵巻物に見られる姿勢になることによってできる、装束の皺や乱れまで見て取れるから、イラストを描く人の資料にもなるだろう。

 巻末には、日本を代表するアニメーション映画監督・片渕須直監督や、日本古代史や古記録学の第一線で活躍する倉本一宏先生との対談も収録。この本を読めば、隅々まで平安時代の暮らしを体験できる。平安時代の人の、生き生きとした日常が分かる。ページをめくるだけでそこは平安時代だと言っても、過言ではない。平安時代に少しでも興味があるなら、この本ほど、想像力を掻き立てられる本は他にない。見ているだけでウットリとした気分になれるこの本で、あなたも、平安を生きた人たちのリアルな息遣いを感じてみてはいかがだろうか。

文=アサトーミナミ

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