プラチナ本Limited Change 2011年5月号今こそ力をくれるWITH YOU BOOK ーあなたに寄り添う本ー

今月のプラチナ本

更新日:2013/9/4

きみのかみさま

ハード : 発売元 : 角川書店(角川グループパブリッシング)
ジャンル:コミック 購入元:Amazon.co.jp/楽天ブックス
著者名:西原理恵子 価格:1,365円

※最新の価格はストアでご確認ください。

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

「WITH YOU BOOK ~あなたに寄り添う本~」

3月11日、未曾有の災害がこの国を襲いました。そしてその余波は未だに収まっていません。
多くの命が失われ、今もまだ危険にさらされています。
私たちは自らの無力さを思い知らされ、打ちのめされました。
でも、私たちには本があります。本はいつだって、うつむいた私たちに力をくれました。
苦しいときこそ、あなたに寄り添い、支えてくれる本があるのです。
今月は「プラチナ本」を一回お休みして、弊誌編集者が薦める
「WITH YOU BOOK ~あなたに寄り添う本~」
を紹介します。本から力を受け取って、次の一歩を踏み出すために。

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編集部寸評

大きすぎる喪失感を受け止めるために

「今日私は たくさんのものをなくしたのでどうしていいかわからなくて 神さまにあいたい」。本書の第1話で女の子が目覚めてつぶやくひとこと。同じく僕たちも今回の震災でたくさんのものをなくした。だから女の子と一緒に神さまを探す旅に出てみたい。その旅は綺麗な15編のカラー絵で綴られていく。どのお話にも貧しかったり恵まれなかったりする子供たちが登場するけれど、彼らは何かをまっすぐに見つめ、精一杯手を伸ばして生きている。本書は、そんな子供たちと出会うことで大きな喪失感を受け止めていく、著者自身の物語であった。そして読む者をもやさしく手当てしてくれる旅。西原理恵子の祈りの絵本から力をもらい、ここから歩き出したい。一緒に。

『きみのかみさま』
『きみのかみさま』 西原理恵子
角川書店 1365円

横里 隆 今号を最後に編集長のバトンを関口に渡します。10年間もの長きに渡って編集長を務められたのも読者の皆様の支えがあってこそ。心から感謝!

人が人を思う気持ちは、人を強くする

生きていると、残酷なことに直面する。突然に、容赦なく。その時われわれは、嘆き悲しむしかないのか。二度と立ち上がることはできないのか。そんなことはない、と信じたい。容易ではないにせよ、人が人を思う気持ちは、苦難を乗り越えていくはずだ。こんなふうに私が書くと〝きれいごと?にしか見えないが、本書は、それが〝本当のこと?なのだと教えてくれる。主人公ジュゼッペは、何かに夢中になると、徹底してそればかりやるトリツカレ男。オペラ、三段跳び、刺繍などなど。そんな彼が新たに夢中になった、風船売りの少女ペチカの心は凍りついていたが……。人が人を思う気持ちは、人を強くする。この本の真剣さとあたたかさは、読む者の力となる。

『トリツカレ男』
『トリツカレ男』 いしいしんじ
新潮文庫 380円

関口靖彦 150ページちょっとの短い物語ですが、何度も読める、読むたびに新たな力をくれる本です。これから先も、あなたに寄り添ってくれることを祈って

希望の源とは

前作『星守る犬』は、強い絆で結ばれたお父さんと愛犬ハッピーが最期まで共にいることを選び、その「生」をまっとうする物語。『続・星守る犬』には、ハッピーと一緒に捨てられた、もう一匹の子犬のその後(「双子星」)と、お父さんから財布を盗んだ哲男少年の旅(「一等星」)を描いた2編が収録されている。共通しているのは、飼い主を信じて傍らに寄り添う犬の姿だ。犬を助けた人間はその犬によって救われる。震災で家族も家も失ってしまった方々は、いま絶望のただなかにある。こんなとき、どうしたら人は希望を持てるのだろうか。本書を読んだとき、自らが守りたい、救いたいと感じる存在を持つことなのではないかと思った。きっと誰かがあなたを待っている。

『続・星守る犬』
『続・星守る犬』 村上たかし
双葉社 880円

稲子美砂 『星守る犬』が生まれた地・東広島で村上たかしさんにインタビュー〈本誌66ページ〉。撮影は奥様のお祖父様が使っていたというアトリエにて

二人(匹)の愛と絆に心あたたまる絵本

子ねずみのセレスティーヌと彼女の育ての親であるくまのアーネストの日々を描いた「くまのアーネストおじさんシリーズ」の最終巻にあたる本作。自分の出生について知りたがるセレスティーヌに、いよいよ辛い真実を告げる日がきたと苦悩するアーネスト。しかし読者には作者のデッサン力とやさしい色彩によって、彼女がどれほど彼に慈しまれて育ったかが伝わる。無口で不器用なアーネストだが、セレスティーヌをあやし、抱きしめ、キスをする姿は愛に溢れているし、彼女は彼のそばで安心しきっている。だから過酷な事実を知ったセレスティーヌは、拾われたその日を大好きなアーネストと出会った記念日にして無邪気に笑う。愛が、悲しみを喜びに変えたのだ。

『セレスティーヌのおいたち』
『くまのアーネストおじさん セレスティーヌの おいたち』 ガブリエル・バンサン/作 もりひさし/訳
BL出版 1365円

服部美穂 本作を読んだあと、本シリーズの番外編のデッサン絵本『セレスティーヌ アーネストとの出会い』もぜひ。読後の感動がさらに増します

みちのく/東北の大地が育んだ精華

幼い頃、祖父母の暮らす岩手県の釜石へ毎年のように帰省した。祖父はよく怪談を語ってくれた。話に登場する山や川に棲むモノノケは、田舎の風土や習慣とともにリアリティをもって襲いかかり、僕は恐怖に震えながらも日常から覗く異界の魅力に惹かれた。本書は怪談王国みちのくが輩出した、井上ひさし、太宰治、宮沢賢治、寺山修司、といった著者たちが、みちのくを舞台に描いた名品によるアンソロジーである。『遠野物語』の刊行から100年が経ったいまも、山に海に川に地霊が渦巻き、その大地で営む人々によって継がれてゆく文化がある。怪談は人なり。征服と破壊が繰り返された歴史のうえに築かれた、みちのくの、蝦夷(えみし)たちの底力による復興を祈ります。

『みちのく怪談名作選 vol.1』
『みちのく怪談名作選 vol.1』 東 雅夫/編
荒蝦夷 2310円

似田貝大介 3月末、京都で開催した綾辻行人さんのサイン会に、なんと宮城や千葉の被災地からかけつけてくれたファンがいた。嬉しくて泣けてきた

心に響く詩

谷川俊太郎の詩『生きる』をお手本に、「みんなの『生きる』」をつなげていこう」というネット上の呼びかけから集まった、100人の仲間たちによる連詩作品の第2弾。「一人ぼっちだと感じること/一人ぼっちじゃないと感じること(なおみゅう。)」「(中略)弱いということ。不完全だということ。もろいということ。/でも、大丈夫だということ。(emiri)」。そして冒頭の谷川さんの詩が、また響く。「(中略)生きているということ/いま生きているということ/泣けるということ/笑えるということ/怒れるということ/自由ということ(『生きる』谷川俊太郎)」。人は常に「いま」と向き合いながら進んでいく。迷ったときには、誰かの言葉に力をもらいながら。

『生きる わたしたちの思い ~第2章~』
『生きる わたしたちの思い ~第2章~』 谷川俊太郎 with friends
角川SSコミュニケーションズ 1260円

重信裕加 「秋葉原vs神保町 聖地探訪大特集」の取材でお世話になった皆様、ありがとうございました。それぞれの街と本の魅力を堪能してください

子どもたちの生命力に勇気をもらう

母親を突然の事故で亡くした杳(はるか)。淋しい、せつない、泣きそうになる気持ちをぎゅっと〝心の中の箱に放り込む?こともあるけれど、かわいい妹の清(さや)、やさしいお父さん、元気な叔母のリカコちゃんに囲まれて、すくすくと成長していくー。淡々と穏やかな日々の描写の中に、子どもたちの成長が描かれた『つづきはまた明日』。新芽が太陽と水と大地の力を糧に大きく育っていくように、杳と清の兄弟も、周りの人々に見守られながら、いろいろなものを吸収していく。その柔軟さ、力強さは、成長するものだけが持つ〝宝物?だ。立ち止まらざるを得ない壁にぶつかっても、いつの日か、前を向いてほしい。前を向くものだけに与えられる宝物がある、と信じて。

『つづきはまた明日』
『つづきはまた明日』(1~2巻) 紺野キタ
幻冬舎バーズC 各620円

鎌野静華 いつもよりちょっと多めに外食をして、お金を使う。いつも通りに仕事をして、新刊を出す。自分が今やるべきこと、たくさんありました

心にぽわんと灯りをともすことばたち

本書は、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で糸井重里さんが綴った原稿1年分から心に残る「小さいことば」を抜き出したもの。一つ一つはとても短く、語られた文脈は大体わからない。日々を過ごす、生きる、そのなかで抱いた素直な気持ちが、気負わないことばですっと差し出される。声高にアジったり、啓蒙的であったりするわけじゃない。ちょっと心をゆるめて、素直に、自分の感じるところを見つめることの、助けになるようなことばたち。どれが響くかは読み手によって違うだろう。でも、168のことばのなかに、あなたの心にぽわんと灯りをともすものが、きっといくつもあるはずだ。(装丁も素晴らしく、持ち主に寄り添ってともに時間を過ごしてくれます)

『小さいことばを歌う場所』
『小さいことばを歌う場所』 糸井重里
東京糸井重里事務所 1360円

岩橋真実 このシリーズは年に1冊刊行されていて、新刊『羊どろぼう。』は5冊目。一般書店(一部)でのシリーズ取り扱いもこの春から始まりました

笑顔で前へ進んでいく

人は人の一所懸命な姿に感動し勇気をもらい前へ進んでいく。『チア男子!!』は、チアリーディング未経験者だらけの男子が全国選手権を目指していく物語。発起人の一馬は 〝チアリーダーとは、観客も選手も関係なくすべての人を応援し、励まし、笑顔にする人のこと。そしてそのために自らの努力を惜しまない人のこと?と語る。一から技を研究し磨き身体を作り各々の葛藤や障害を乗り越え演技を完成させていく。読後は目の前で彼らの演技を見終わったかのように力が湧いてくるのだ。悲観的な感情に支配されてはいけない。日本応援のためにチア男子のように汗かいて笑顔で元気いっぱいに働こう。この本を読んでその単純だけどとても大切なことを思い出した。

『チア男子!!』
『チア男子!!』 朝井リョウ
集英社 1575円

千葉美如昨年物語のモデルとなったSHOCKERSの演技を見ました。演技の素晴らしさは言うまでもなく、全員のはち切れんばかりの笑顔に元気をもらいました

読者の声

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