武器を憎む少年兵が、「世界平和のため」に武器を売る商人と旅をする

公開日:2013/4/9

ヨルムンガンド(1)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:高橋慶太郎 価格:432円

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武器を憎む少年兵ヨナが、世界平和を願う武器商人ココとともに、紛争地帯を旅をするお話。2012年にアニメ化されていますが、原作漫画を忠実に再現しており非常に評価も高いようです。漫画とアニメ、どちらから先に見ても楽しめると思います。

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「ヨルムンガンド」というのは、北欧神話に登場する蛇の怪物のことです。古代ギリシアでは「ウロボロス」と呼ばれており、自分の尻尾をくわえた蛇の姿をしています。蛇は、キリスト教圏ではアダムとイブをそそのかした存在として忌み嫌われていますが、古代には脱皮する姿が再生や循環・永続性を意味するものとして尊ばれていたりします。いろいろ深読みしたくなるタイトルです。

しかし、本扉には「五つの陸を食らい尽くし、三つの海を飲み干しても、空だけはどうすることもできない。翼も手も足もないこの身では。我は世界蛇。我が名はヨルムンガンド。」という文章がありますが、物語の中にヨルムンガンドの姿は登場しません。それどころか、ヨルムンガンドの名前が出てくるのはストリーの終盤だったりします。だから、はじめのうちはあまり深読みせずに楽しんだほうがいいかもしれません。

1巻では、ココがヨナに武器を売る理由を問われ、「世界平和のため」とうそぶく印象的なシーンがあります。人を殺すための道具を売る理由が平和のためというのは、皮肉以外のなにものでもないですよね。「なんだそりゃ?」と思うのですが、実はこの言葉の裏には非常に深い意味が隠されていたりします。1巻から随所にそういうポイントが散りばめられています。最後まで読んでからもう1度初めから読み返すと、「ああ、このセリフ、この表情、このシーンは、そういうことだったのか」という楽しみ方ができるでしょう。何度でも読み返したくなる作品です。


アニメでは心の声を全員が同時に喋るという演出だった

カーチェイスや銃撃戦は迫力だ

ヨナに「ココはなぜ武器を売る?」と問われた答えがこれ。世界平和を願う武器商人という皮肉

ココは危険な時でも笑顔を絶やさない

いつも無表情なヨナが声を上げて笑う珍しいシーン
(C)高橋慶太郎/小学館