「文明進化ノ先二何ガ在ル?」 あなたの宇宙的知性と霊性がうずきだす史上最高SF

小説・エッセイ

2013/5/16

幼年期の終り

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 早川書房
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:アーサー・C・クラーク 価格:702円

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突然ですが質問です。
Q.先程からあなたを上から見下ろしているのは“誰”ですか?(つむじの上方を想像して…)。なんだか首筋がゾワッとしませんか?

一体、人は天上に“何”を観てきたのでしょう。神を超える何か? そんな深い問いにのせて、人類の宇宙的進化を詩的哲学的に解いたのが、SF界の巨星アーサー・クラークの最高傑作。読めば、あなたの宇宙的知性と霊性がうずきだす事。“コックリ”とうなずけるはずです。

読後、次の素朴な問いが立ち上がったので、古今東西の智の巨人に聞いてみました。

Q.人はなぜ空を見上げてしまうのでしょう?
A.それは、光が幸せを歌っているからだよ…。
永六輔はそう詠い、坂本九がこう歌いました。
 「見上げてごらん~ 夜の星を~♪
  小さな星の~   小さな光が~♪
  ささやかな幸せを〜うたってる~♪」

Q.人はなぜ空を見上げてしまうのでしょう?
A.それは、“存在の意味”を問うためだよ…。
P・ゴーギャンは、死の淵でこう描きました。
 「われわれは、何処から来たのか?
  われわれは、何者か?
  われわれは、何処へいくのか?」

Q.人はなぜ空を見上げてしまうのでしょう?
A.それは“未来の記憶”に観るためためだよ…。
巨匠アーサー・C・クラークはこう記しました。
「あらゆる理性や論理を超えたものがそこにはあったのだ。中世において、人々は<悪魔>を信じ、それを恐れた。しかし、いまは二十一世紀だ。それとも、人間には種族的記憶ともゆうべきものが、結局は実際にあったのだろうか?」

うーん。お三方とも、深いー。
人はなぜ空を見上げてしまうのか? この作品を読むと、その理由が観えてくるのです。

有史以来、人類は直立歩行し、空を見上げ、星空に畏敬を感じ、天上なる神に祈り、芸術で神々と交歓し、神を超える知性たる科学技術によって宇宙を目指そうとしてきました。その進化は、この“種族的記憶=未来の記憶”の仕業だったのか、と思うのです。

作品には、2つの上なる超存在が出てきます。
ひとつは、人類の知性を遥かに超えた宇宙的知性=地球外生命体。上帝(オーバー・ロード)。さらに、その知性もまったく叶わない上帝の上の存在である上霊(オーバーマインド)。

上帝と上霊……。
人類の宇宙的進化の両極にある超存在による管理下におかれた人類は、皮肉にも上(=進化)を目指さなくなる。
神も国家も、戦争も貧困も、孤独も芸術も。
科学も進化も、そして、希望も冒険心もすべてが瓦解し、無意味化し、揮発する……。平和と豊かさと引き換えに……。
そんな悲壮な未来が、描かれます。

人の上に人を創る。人の上に神を創る。人の上に知性を創る。人の上に霊性を創る。有史以来、右脳と左脳をつなぐ橋梁を太らせ、人類を超える存在を上下時空の中で上へ上へと仮想してきた人類。その古層概念=未来の記憶こそが、人類の進化をもたらしてきたのだとすると、人類を矮小な混乱に陥れる幻想としての神や国家も、必要悪にも見えてきたりして……。

ハリウッドの宇宙もの映画の基台となった、近未来SFの精緻な描写は、1946年に描写したものですが、2013年のいまでも新しい。都市上空を覆う大宇宙船のシーン。火星人的地球外生命の姿。虚時間や反重力を活用した圧倒的な先端科学技術……。

アーサー・C・クラークは、既に観た“未来の記憶”を記すように描いているのだ。

最後に、それを感じさせるアーサー・C・クラークの有名な語録で結びましょう。
「二つの可能性がある。宇宙にいるのは私たちだけか、そうでないか。どちらも同じくらいゾッとする」。
クラークの知性と霊性は、人類の孤独感、、人類の存在価値観、そして未来への記憶と繫がっている。ゾワっ!


ニューヨーク、ロンドン、パリ、モスクワ、東京、…。世界都市の上空5万メートルに、突然、銀色に輝く宇宙船が顕現する。その名は、上帝(オーバーロード)。その圧倒的な知性を読めば、新帝国主義に走る昨今の大国の、狭量な知性に気づくはずだ

冒頭から、クラークの詩的科学的哲学的SF描写に魅せられる。物理学、純理数学、応用数学を駆使し、人類の存在価値を問う。そのクラーク博士にしか観えない未来の記憶が、人類より大きな秩序への関心へといざなう

東西冷戦、第三帝国間のゲリラ戦……。人類は、高度な知性なる科学技術を駆使して、低度な争いに、歴史を消尽してきたことが、思い知らされる

ある種の予感、不思議な胸騒ぎ……。人類が空を見上げることに思い立ったのは、やはり”未来の記憶”なのである

農業革命、産業革命、情報革命……。人類の歴史は、不連続な進化=イノベーションに魅せられてきた。しかし、歴史が息をひそめる程の現在と過去が断ち切れる瞬間は、ステーブ・ジョブスも、フォードも、ウォルト・ディズニーも、創り出せていない
(C)アーサー・C・クラーク/早川書房