介護の現場とは? 高齢社会の問題点とは? 新米ヘルプマンが介護の世界に飛び込む

公開日:2013/10/2

ヘルプマン!(1)

ハード : PC/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:くさか里樹 価格:525円

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「生涯、いつでも自由に学習できる社会を」という理念で、文科省が生涯学習政策を進めています。また、厚労省は「介護予防」の観点で、高齢者は体を動かし、健康を維持して要支援状態にならないよう呼びかけています。

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人は何のために生きるのでしょうか。「幸せな家庭を築く」「なりたい職業に就く」など人それぞれ、さまざまな夢があるでしょう。しかし、人は誰でも平等に老いていきます。生き続ければ、いつかは高齢者に。高齢者になれば、筋力は衰え、健康を損ないやすくなり、場合によっては認知症などを発症することも。長生きしてよかった、と誰もが思えるようにするために、前述の生涯教育や介護予防があります。

さて、本作の主人公・恩田百太郎(高校生)は、自宅で一緒に暮らす祖母がふと「ポックリ逝きたい」と呟いたのを聞いてしまったこと、そして、近所の特別養護老人ホームで壮絶な介護現場を見てしまったことから、「見過ごせない」と高校を中退して介護の道へ足を踏み入れることを周囲に宣言します。

1巻で取り上げられているのは、認知症高齢者に対する身体拘束や入浴拒否に対する強制更衣など。介護を知らない人が見たら虐待にうつるかもしれないこれらの行為も、介護現場ではやむなしという施設側の主張と理由がリアルに描かれています。正義感あふれるがまだ青く勢いだけの、介護に対して素人な百太郎は、自分が思い描く介護の理想と現実の間で苦悶します。しかし。そんな中でも、まわりの介護職たちが声かけや技術など、介護職の専門性を発揮して誰もが心地よい介護をしていく様に心動かされ、自らも介護職として、そして人間として少しずつ成長していきます。

高齢者と介護を通じて、高齢社会の問題点と命の価値を考えさせる本作は、2011年に第40回日本漫画家協会賞大賞を受賞。高齢者が増え続けるこれからの日本と向き合っていくための、よいテキストだといえます。


祖母が「ポックリ逝きたいよ」と漏らすことにがく然とする百太郎

高齢化社会到来と介護保険スタートは、ビッグビジネスの始まりでもある、というが…

徘徊していた認知症高齢者を老人ホームまで連れてきたことから、百太郎の介護の道が始まる

やむなく身体拘束をする理由とは…。1巻は、介護保険制度が始まる前年。現在の介護現場では見られない場面もあるが、作品を通して、介護がリアルに描かれている