凄惨で異常な連続殺人事件を描いたサイコミステリーの意外な犯人は?

小説・エッセイ

公開日:2013/11/4

Testament ‐テスタメント‐(上巻)

ハード : iPhone/iPad/Android 発売元 : 栗見 鳴
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著者名:栗見鳴 価格:※ストアでご確認ください

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この作品は、警視庁捜査一課の刑事が遭遇した、あまりに凄惨で異常な連続殺人事件を描いたサイコミステリー小説です。リアリズムを追求した描写になっており、遺体の状態が詳細に表現されていたり、警察の用いる隠語が随所に出てきます。暗く重たい内容なのですが、ストーリーのテンポがいいのでサクッと読み進められます。

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主人公の辻はまだ若い刑事ですが、犯罪心理学を学んだ経験と、抜群の観察力、冷静な分析力から、捜査一課でも一目置かれた存在です。恩師が殺され迷宮入りしてしまった事件をきっかけとして警察官を志したという、普段の冷静さからは想像もできないような熱い心を持った男だったりします。ペアを組むことになった所轄の刑事は、現場の経験重視で犯罪心理学などバカにするようなところがある粗暴男。タイプが全く違うのですが、なかなかいいコンビだと感じさせられます。

手口の異常さから犯人は快楽殺人者であると想定され、周辺の不審者リストを元にアリバイのある人を除外していくという地道な捜査が行われます。聞き込みに回る中、何人も怪しげな人物が登場します。現場に残された声明文など遺留品はたくさんあるのに、足跡が雨で洗い流されてしまったり野次馬に踏み荒らされてしまったりと、犯人像を絞り込む証拠がなかなか掴めません。そういった中、警察をあざ笑うかのように次の殺人事件が起きます。このままでは迷宮入りか? と思われた時に…ネタバレになるので詳しくは書けませんが、あまりに意外な幕切れでした。

なお、タイトルの「Testament」には、証拠、契約、信条表明、遺言状など複数の訳語がありますが、どの意味で付けられたのかは作中で明確になっていません。犯人の書いた「声明文」を指すのかと思ったのですが、最終章一節のタイトルになっていることから考えると、恐らくダブルミーニングになっているのでしょう。


主人公の辻は、犯罪心理学を学んだ警視庁捜査一課の刑事

犯人は、TV局に宅配便で遺体の一部とともに犯行継続をほのめかす声明文を送ってきた

被疑者と書いて「マルヒ」と読む。警察の使う隠語

指紋の採取を感情的に拒む人に「関係者指紋」の説明をする

「戒名」は警察の使う隠語で、殺人事件の名称のこと