グルメ界を覆う悪しき構造を一刀両断

更新日:2013/12/17

グルメの嘘(新潮新書)

ハード : iPhone/iPad/Android 発売元 : 新潮社
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著者名:友里征耶 価格:※ストアでご確認ください

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行列のできるお店で食べたくないのである。もう列ぶのがいや。卑しい感じがする。

そもそも飛び切りうまい店なんかじゃなくともまったくかまわないんだワチシは。普通においしければいい。だいたい行列ができてるからさぞかし美味しかろうって、あんたが列んでるから行列ができてんじゃないか。

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こういう店に限って店主がひねくれ者。まずスープを一口すすってくれろ。味覚が鈍くなるからビールは飲むな。あげく集中を妨げるのでお喋り厳禁。アホか。

食べたいものは食べたいようにして食べて当たり前。もうそういうときワチシは、ソースダボダボかけて泥沼にしてやるんだ。

それでも行列のできるお店は衰退しない。食への情熱は、食欲をオーバーフローして、名店といわれる聖地への巡礼となっている。

さて、本書はそうした食へのこだわりがさらにエスカレートして、「グルメ」と呼ばれるようになった人々と、彼らを取り巻く社会状況について書き記した痛快な一冊。あからさまなとこをいえば、現在の日本の食道楽界は腐っとる! なってないじゃないのあんたたち、と一グルメ・ジャーナリストの立場から悲憤慷慨しておられる嘆きの書なんであります。

ここに書かれてることがほんとうなら、いやたぶんほんとうだとワチシにも思えるのですが、そりゃ黒いため息もつきたくなる。

グルメ・ライターをはじめとした食のジャーナリズムが名シェフに「ヨイショ」することしか考えていない、という点から著者はまず書き起こす。読者の方でなく、店主の方を向いちゃってるわけライターが。その方が次の取材もやりやすいに決まってるから。

そのせいで通称「名人」たちはうぬぼれ、味を落とす。第2店、第3店を展開するや、味への目配りは当然片手間になり、しかし情報だけは酸鼻を、いや賛美をきわめたフレーズが行き渡るからお客は騙されてありがたく頂戴することになる。

覆面ライターである著者は、業界になんの負うところもない立場であるから、客を侮っている名店の態度、放送作家や有名人の信用できない舌、グルメ界を切る刃先は実に鋭く痛快なんである。

そのほか、名店で出されるワインのビックラこいて高いわけ、メニューの梅・松・竹にこめられた思惑。予約時のコース事前選択のからくり。などなどとびきりの辛口で次々と構造悪が暴かれていきます。いやもうこうなると一体誰の舌を信用すればいいんだか。って自分のだよ。


過激です

暴露します

これが悲しき真実なのでしょうか