夏公開。ジブリ映画の原作『思い出のマーニー』 はかない悲しさ一杯の物語に、米林監督はどんなカラーをつけるのか?

小説・エッセイ

2014/6/22

思い出のマーニー 〈上〉 (新版)

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 岩波書店
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:ジョーン・ゲイル・ロビンソン 価格:691円

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 読後「いやー、この話をジブリはどうやって表現するんだろう….」という印象が強烈でした。アンナは、「おとなしいおちびさん」と呼ばれ、「やってみようともしない」と大人に言われ続けている女の子。彼女が思う「ふつうの顔」をしていると、大人は誰ひとり、アンナを気にはとめません。両親はなく、友達と遊ぶより何も考えていないことが多いアンナ。ミセスプレストンの家に預かられていたアンナは、その「やってみようともしない」ことを周りの大人に心配され、ロンドンからリトル·オーバートンのペグ夫妻の家に一時の療養のような形で送られてしまいます。

 その移住もアンナにとっては新世界へ入るようなどきどきする出来事ではなく、彼女の内向的な思考はどんどん深く内側へと入り込んで行く、そんな、なんともやりきれないのが前半。可哀想、と大人に思われるような子供が、どんな風に自分の中で言葉を編んで、自分だけの世界に閉じこもってゆくのか、子供の視点で周囲を表現しながら、その孤独感は相当なもの。それが、アンナが「しめっけやしき」のマーニーという女の子に出会うことで、生活が急激に変わっていくのです。

 海に近い河口の、湿地帯にあるのであろうそのやしきの魅力と、お金持ちで綺麗なマーニーと友情を深めてゆくアンナ。その不思議な女の子に会うためにペグ夫妻に見つからないように夜中に船を漕いで彼女に会いにゆくアンナ。殻に閉じこもっていた彼女がひとりの親友を持つことで、まるでエネルギッシュな行動に出る、そのギャップに読者は、どんどん惹きつけられます。

 それでも「気をつけてアンナ!」と思ってしまうのは、マーニーという存在があまりにナゾに満ちているから。リトルオーバートンの生活では、段々とアンナの周りに人が集まってきますが、もの悲しい気持ちはじーんと続いている感じ。ジブリはこれをポジティブに転換するのか、それともこの哀愁感をそのまま表現するのかしら、というのが一番気になります。

 子供が少女に変わるころの、繊細な心の移り変わりと、ときに冷酷な観察眼。宮崎世界が得意とするだろう、こうしたジャンルが、今回は米林宏昌監督によってどんなカラーをこの作品につけるのか、絶対映画を観に行かねば、と思いました。個人的に、もっともシンプルな言葉では、「モノガナシイ」1冊。児童文学は、自分をあの時代に引き連れてゆきます。トリップ感100%で大推薦です。


ロンドンでの生活。グレーな日々

ペグおばさんの家の近くで探索を始めたアンナは一軒のやしきにひきつけられてゆきます

アンナとは正反対のマーニーとの刺激に満ちた遊び

マーニーはどこかへ….あれは一体、誰だったの?