「30歳、童貞、女子小学生はじめました」　主人公の望みが叶った後のドタバタ劇

　非常に挑戦的なタイトルというか、欲望剥き出しというか。中身もそのままで、冒頭名無しの冴えないサラリーマンが公園で休んでいたところ、目の前には楽しそうにはしゃぐ小学生女子児童の姿がちらちら。それを見て「かわいい女の子になれたら楽しいだろうな…」と現実逃避していたところ、パンツをかぶった自称妖精の犬みたいなやつ（コロコ）が出てきて、夢川るるという女の子になってしまい、女子小学生として生活をはじめるというもの。

　もとはニコニコ静画に投稿されたWEBマンガで、紹介文では失業したからマンガを描いてみるというような趣旨のことが書かれていたと記憶しているのですが、投稿時から画力を含めてマンガを作る地力は相当高く、ど真ん中に投げ込んでくるネタと相まって再生回数もコメントもすごかった。最近では、ラノベもマンガもネットで集客力のある作品を商業出版するというのは珍しいことではなくなったので、本作が商業化されたのも当然かもしれないですね。

　ヤングアニマルで連載となっても特別飾ることはなく、ノリはニコニコの時のままで、話の中心は主人公・るるちゃんと、その友人りりちゃんとののちゃんの薄い百合（るるちゃんの中身はおっさんだが…）みたいな友人関係をひたすら描いていくのです。一応、るるちゃんには夢力を集めるというミッションや、1巻の終わりでは正体を知っている子の存在が匂わされるのですが、夢力といっても要するにパンツ収集だし、敵の存在も先行するWEBを読めばわかるように、まあエロお笑いから外れない。

　すごく古い作品だったら、おそらくこの敵と戦ってなにかを達成する話が中心になっただろうし、少し前の作風だと戦いつつも主人公がハーレム構造を築いていく話になったと思うのです。しかし本作で、るるちゃんとなったサラリーマンが元の生活を振り返ることは皆無。いわば主人公の目的は冒頭で叶えられていて、あとはその状態を楽しみ維持していくという話にも読めてしまう。WEBマンガという出自もそうだが、マンガの構造も最新ですね。