河原でただ「喋る」だけに漂う哀愁……高杉真宙×葉山奨之出演! 今夜スタートのテレ東ドラマ『セトウツミ』の魅力

マンガ

更新日:2017/10/17

『セトウツミ』(此元和津也/秋田書店)

 青春――、その響きだけ聞けば「甘酸っぱい恋」とか「全力で部活に打ち込む」とか、なんかキラキラした眩しいもの、というイメージがある。しかし、自分の10代を思い返してみると、とくに部活動に本気を出した記憶もないし、べつに甘酸っぱい恋をした記憶もない。

 当時は、10代という年齢に重要な意味を見出すこともなく、ただただ日々を消費して終わった……。いわゆる、マンガやドラマの“青春像”とはかけ離れた学生時代を過ごしていた人にぜひ読んでほしいのが、10月13日からドラマの放送がはじまる『セトウツミ』(此元和津也/秋田書店)だ。

 主な登場人物は、ちょっとおバカな瀬戸小吉とクールなインテリメガネの内海想という、関西の男子高校生。彼らは、学校帰りの放課後、“いつもの河原で暇つぶし”をしている。サッカー部を辞めてヒマになった瀬戸と、塾に行くまで時間を持て余している内海の2人は、あるときは延々と喋り続け、またあるときは瀬戸が考案した謎のゲームをするなど、あらゆる方法で時間を潰しまくる、それが彼らの青春……。

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 ちなみに、2016年には若手実力派俳優の菅田将暉(瀬戸)と池松壮亮(内海)のダブル主演で映画化を果たしている同作。過去にもダ・ヴィンチニュースでは、瀬戸と内海の会話劇の魅力をお伝えしたが、今回は作中にほんのり漂う哀愁について紹介しよう。

 第2巻、内海は大道芸人のバルーンさんの協力のもと、瀬戸の誕生日を河原で祝うことに。放課後、いつもの河原に現れた瀬戸に「Happy Birthday」と書かれた陽気なメガネと風船の王冠(バルーンさん作)をかぶせて、プレゼントを渡すも、無言の瀬戸。

瀬戸「……」
内海「どないしてん 瀬戸」
瀬戸「実は今日な うちの猫死んでん」
内海・バルーンさん「(絶句)」
内海「え マジのやつ?」
瀬戸「うん ミーニャンが」
内海「………」
瀬戸「もうヤバいってのは知ってたから覚悟はしてたんやけど」

 瀬戸が話し始めると同時に、瀬戸が被っていた風船の王冠が音を立てて割れる。絶妙なタイミングで割れた王冠と陽気なメガネをかけたままミーニャンを失ったことへの悲しみを、真剣な表情で語る瀬戸。

『セトウツミ』には、このように笑いたいのに笑っていいのかわからない、そんなシチュエーションも少なくない。

 第3巻では、内海が瀬戸に貸した2000円の返済のことでモメていると、瀬戸の父親が登場。パチンコをするために、息子の瀬戸から金を巻き上げていくシーンにも、哀愁が漂う。

瀬戸「なんでこんな時間からパチンコやってんねん!」
瀬戸父「おうなんや金持ってるやんけ!」
瀬戸「ちょっ! 子供から金巻き上げるとかどんだけ最低やねん!」
瀬戸父「あ? 養ってもらってる人間がなめた口聞いてんちゃうぞ。こんなとこでダラダラ喋ってるだけのクソガキが。自立してからいっちょまえなことぬかせ」

 捨て台詞を吐いて去っていく瀬戸の父。そのうしろ姿を見ながら、ぐうの音も出ない瀬戸と内海……。高校生の無力さを痛感させられたエピソードだった。

 もちろん同作最大の魅力は、彼らが繰り出す軽妙な会話にある。しかし、各話にそこはかとなく漂う哀愁にもぜひ注目してほしい。

文=真島加代(清談社)