現役京大院生の書店員が薦める“人生を狂わされた”名著50選!「作品の芯を射貫かれた」有川浩も推薦!

文芸・カルチャー

2017/10/14

『人生を狂わす名著50』(三宅香帆・京都天狼院/ライツ社)

 〈本に助けてもらった記憶。人には言えない言う必要もない、だけど、たしかにあのとき「あの本」が私をすくってくれたんだ、という記憶〉。『人生を狂わす名著50』(三宅香帆・京都天狼院/ライツ社)のあとがきに書かれた文章だ。これを読んで、かつて「ダ・ヴィンチ文学賞」の募集時に、編集長(当時)がインタビューで語っていた言葉を思い出した。「本を読んで救われた経験のある人が、新たな物語を生み出すことでバトンを繋いでいきたい」。惜しくも文学賞は募集停止してしまったが、時を経て、世代を超えて、「本に救われる」ことを語る人たちがいる。紙は時代遅れ、本は売れない、娯楽は他にもたくさんある、なんて言われる時代だけれど、変わらずに紡がれていく愛があるのだと、感じさせられる一冊だった。

 『人生を狂わす名著50』の著者は、京都天狼院書店につとめる、現役京大院生のスタッフ。『京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。《リーディングハイ》』というタイトルで、同書店のウェブサイトに掲載されたものをもとに、50冊に拡大して書籍化されたブックガイドだ。

 現実逃避をするためにはじめた読書。本は、現実を生き抜くための支えだったはずなのに、気づけばある本に出会って進路を決めたり、いつのまにか本によって人生がふりまわされたりしている。抵抗しても、あらがえない。面白い本に一度出会ったら最後、その魅力に牽引されて気づけば思いもよらぬ方向へ人生の舵を切っている。

 だけどこれ、本好きならば誰もが共感するんじゃないだろうか。進路だけでなく、部活や趣味、恋愛傾向や憧れのシチュエーション。自分を構成するあらゆるものの元をたどれば、あのとき読んだあの一冊に多大なる影響を受けていた、なんてことが振り返ってみればきっとあるはずだ。本書で紹介するのは、そんな読者に影響を与える名著50冊なのである。

 テーマもさることながら、紹介スタイルもユニークだ。『グレート・ギャツビー』は「スマートな晩年VS向こう見ずな青春:この世のロマンチストな男の人全員へ」、『夜中の薔薇』は「やかましい言葉VS美しい沈黙:『言いすぎてしまう自分』がいつも恥ずかしいあなたへ」と、シンプルだけどキャッチーな言葉で読者の興味を煽り、各書の中から「人生を狂わせる一言」をピックアップ。小説だけでなく、マンガや評論も含まれているうえ、選んだ一冊が気に入ったら、次にどんな本を読めばいいか教えてくれるのもありがたい。テーマにそって、ポップな文体で「バカとはなにか」「フェチズムとはなにか」などの評論を挟みながら解説されていくのも、さすが現役京大院生兼書店員の手腕というところ。

 名著50冊のラストに紹介されているのが、先日ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』。「今まで読んできた本の中で、ていうか世の中で出版されている本の中でいちばんの傑作だ、と私が信じて疑わない小説です」と受賞を予見したかのような大プッシュ。この本で、著者はどんなふうに人生を狂わされたのか――。

 「作品の芯を射貫かれた。予断のない読み筋が清々しく、ありがたい」とは、『図書館戦争』が名著に選ばれた有川浩氏の推薦の弁。言葉に誠実で本に対する愛の溢れた氏にそう言わしめたほどの魅力が本書にはある。本に人生を狂わされた人、あるいは今後もどんどん狂わされたい人。必読の一冊だ。

文=立花もも