生きるのがラクになる、禅的「いい歳の重ね方」とは?

暮らし

2017/10/29

手ぶら人生 禅が教える「いい歳の重ね方」 (知的生きかた文庫)

著:
出版社:
三笠書房
発売日:
『手ぶら人生 禅が教える「いい歳の重ね方」』(境野勝悟/三笠書房)

 人間的に成熟して、豊かに暮らすとはどういうことだろうか。やはり心の平穏が一番ではないだろうか。不安や悩みばかりが頭をよぎっていては、せっかくの人生がもったいない。「老い」とは、悩みが増えていくようにも思えるが、過去や未来のことを考えるのではなく、「今」だけを生きることに集中すれば、普通の毎日にも喜びや楽しみはたくさん落ちている。

 定年を迎えた方、これから迎えようとする方は、仕事に生きがいを見出していた方が多いのではないか。30年、40年これまで必死に働いてきて、家族のため、自分の出世のために嫌な仕事だって耐えて働き続けた。そして、定年を迎えたら、「自分のやりたいこと」ができると夢を描いていたのではないか。しかし、仕事を辞めたら実際には、やることがない。

 今まで仕事に生きがいを見出していたから、仕事以外のことをするにも、どうしていいかわからない。時間ができたらやりたいと思っていた陶芸や写真、何か別の趣味を見つけようと始めてみても上手くいかないから続かない。

 せっかく時間が手に入ったのに、心が晴れない日が続いたのでは、豊かに暮らすなんてできないだろう。歳をとると、いろいろ悩みも増え、その悩みがすぐに消えずに、ずっと心に残ってしまうようだ。

 『手ぶら人生 禅が教える「いい歳の重ね方」』(境野勝悟/三笠書房)は、重たい心をすっと軽く晴れやかに変えられる「禅」語を教えてくれている。心が晴れやかな状態の「手ぶら人生」とは、不要なものを捨てていくことだ。

 定年後の趣味も「人からほめてほしい」という【願望】を捨てれば、単純に楽しめると著者の境野勝悟氏はいう。そうでなければ、趣味も「つらい仕事」になってしまう。

 まわりの評価を気にして、他人に遅れてはいけない。そう思うことは、仕事をする上では大事だったかもしれない。ただ、趣味の世界にまで持ち込んでしまっては、楽しむ気持ちを忘れてしまう。

 境野氏は、働いたお金で海外旅行やおいしいものを食べることばかり考えることも自分中心に物事を考える「自分軸」のようでいて、実は、他人の評価に振り回されている「他人軸」だと書いている。これは、若い世代の人たちにも、通じるところがあるように思う。生活の中心がSNSで、どれだけたくさんの「いいね!」がもらえるか、もっともっと他人に認められる評価がほしい。そんな考えに毎日を支配されてしまっていないだろうか。

 仕事で情報を発信している人は評価を求めるけれど、自分が好きなことを発信したくてSNSを始めた人は、他人がどう思おうが関係なく、自分が好きなことを好きなように発信してほしい。

「世間のしがらみと関係のない心持になって、自分のほんとうにやりたい芸術や、趣味や、好きな友との文化生活を豊かに楽しむ」境野氏が伝える禅が教える「いい歳の重ね方」はどの年代にも当てはまる、「今」を豊かにする教えなのかもしれない。

文=大石百合奈

この記事で紹介した書籍ほか

手ぶら人生 禅が教える「いい歳の重ね方」 (知的生きかた文庫)

著:
出版社:
三笠書房
発売日:
ISBN:
9784837984870