ほんの少しのミスが引き起こした最悪の事故。 今を生きる私たちが学ぶべきリスクマネージメントとは

社会

2017/11/13

『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか(草思社文庫)』(ジェームズ・Rチャイルズ:著、高橋健次:訳/草思社)

 ちょっとしたミスの組み合わせによって、最悪の事故につながることがある。しかも最悪なときに最悪の判断を下してしまう…。『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか(草思社文庫)』(ジェームズ・Rチャイルズ:著、高橋健次:訳/草思社)はそんな最悪な状況が引き起こしてしまった恐ろしい事故について詳細に描かれている。

■早くしろという圧力に屈する

 急かされてしまったために、重要な所を端折ってしまう……。気持ちが急いてしまったために不正確な会議書類を提出し、結果的に上司に怒られたことはないだろうか。その場で怒られればまだいいが、その書類が独り歩きし、上層部や株主にまで伝わり、今さらその資料が一部間違っているなどと言い出せなくなる事態になったら大変なことになる。

 NASAでさえそのような事態は起こる。1986年のスペースシャトル「チャレンジャー」の打ち上げの出来事だ。ゴム製Oリングの不具合を小手先の対策でごまかし、マネージャーの圧力に屈して打ち上げを決行した。それがチャレンジャーの打ち上げ失敗・墜落を引き起こしてしまったのだ。

■最新技術に不釣りあいな乗組員たち

 海洋掘削装置オーシャンレンジャーは最新技術で作られた機械だった。しかし機械の性能に反し、乗組員は簡単な操作だけを教育され、制御システムの教育訓練を受けていなかった。操作マニュアルはあったがしまい込まれたまま。緊急対策マニュアルもあったがそれは正しく理解されていなかったのだ。乗組員は「絶対に沈みっこない」という言葉を信じ込んでいた。そうした数多くの問題が重なり、嵐の夜に転覆し、乗組員全員を死亡させる大事故を引き起こしたのだ。まるで日本の原発神話のようではないか。日本でもいつ事故が起こってもおかしくないと思わされる事例だ。

■感情がもたらす人間の限界

 疲れている時に乱暴に扱った部下が退職。1カ月かけて作った積算書が見当たらなくなり入札に間に合わなくなる……。考えただけで恐ろしいがたったひとつのミスで、会社の屋台骨を揺るがすことだってある。

 タイタニック号の船長が無線室に立ち寄っていたなら、あの沈没事故は防げたかもしれない。無線オペレータが電報の山に忙殺され、巨大氷山に近づいていた警報は後回しにされていた。このことが最悪の事故に繋がったのだから、人間の感情が引き起こしてしまった大事件は数知れない。

 今、日本で起こっている東芝倒産騒動や神戸製鋼の不正、日産自動車のデータ改ざんなどあらゆる「最悪の事故」を招きかねない問題になっている。つまり、誰もが最悪の事故に遭遇する可能性がある。

 本書は「最悪の事故から生還する能力」「最悪の事故を食い止める能力」「事故の前兆を感じとる能力」についても詳しく書かれている。この先、最悪の事故に遭遇しないためにもぜひ読んでおきたい。

文=中島ホタテ