「ヒゲ受け」好きも、そうじゃない方にも読んでほしい! 中世ヨーロッパ風ファンタジーBL最新刊が発売!!

マンガ

更新日:2017/12/25

『BARBARITIES』(鈴木ツタ/リブレ)

 一部の腐女子たちには「受けがオヤジ」「かわいくない」BLが求められている(気がする)。その中でも「ヒゲ受け」はコアなファンを持っている(と、思う)。

 あやふやな表現になってしまう理由は、腐女子の趣味嗜好は人それぞれで、一概には言えないからなのだが、私の個人的な好みを言うと、ヒゲ受けは好きではない。中性的な美人受けがよい。さらに言えば、その美人受けは他の登場人物に対しては攻めになるというパターンが最もよい。

 ……何が言いたいかと言うと、『BARBARITIES』(鈴木ツタ/リブレ)は、老若男女を虜にする金髪碧眼の美形子爵×堅物で冴えないヒゲの司法卿というカップリングで、受けがまったく私の好みではない。なのに、「ハマってしまった」ということである。

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 私のように前情報や表紙から、「受けが好みじゃないんだよな~」と手に取っていない方もいるのではないだろうか。食わず嫌いしないで、とりあえず読んでみていただきたい。

 歴戦の恋の勝者であったアダムが、真面目で色恋沙汰に無関心のジョエルという冴えない堅物の男に「本気の恋」に落ちて、傷ついたり、熱烈アプローチしたり、それに対してジョエルは戸惑ったり恥ずかしがったり呆れたり軽蔑したりする。

 そんな二人の、はがゆくてニヤニヤしてしまうような関係は、どこか少女マンガのような王道さと胸キュンがあった。

 中世ヨーロッパ風のファンタジーBLである本作。

 山間にある小さな国の司法卿・モンタギューの元に脅迫状が届く。その警護を任されたのが隣国からやってきたアダム。ジョエルはモンタギューの甥として、アダムと知り合う。

 アダムは麗しいほどの美形であり、男女問わず虜にする男性でありながら、中身は来るもの拒まずの無節操な博愛主義。多くの人と恋愛を楽しみ、おもしろおかしく一生を過ごすと思っていた彼だが、初めて本気の恋に落ちる。

 しかしその相手は、今までのやり方が全く通用しない堅物のジョエル。むしろ、誰にでも愛を振りまき、恋愛のことばかり考えているアダムに対して呆れている面もあるほど。

 真逆な二人のじれったくてハラハラする恋の物語に、政治や宗教の問題、また王位継承を狙う人々の野望などが絡まり、本作はBLの枠を越えて読み応えたっぷりの物語となっている。

 ちなみに最新2巻では、ジョエルがヒゲを剃った時のお話が描き下ろされている。

 本作にハマる前、「ジョエルにヒゲがなかったならなぁ」と思ったこともあったので、「キタ!!」とワクワクしながら読んだのだが、……ヒゲがないと、なんだか物足りなかった。ジョエルのかわいらしさはヒゲも込みだったのだ。これからはヒゲ受けも守備範囲に入れよう。……新たな趣味が目覚める(?)一冊でもある。

文=雨野裾