史実と高校生的発想の見事な調和。小学生でも定年後でも楽しめる作品

更新日:2014/10/10

信長協奏曲 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:石井あゆみ 価格:432円

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歴史物が好きなわりには日本史に弱いと常々反省している。将軍の名前とか、歴史的事件の年号とか、めっきり弱い。そういえば、小中高とテスト前、歴史漫画で速攻一夜漬けなど試みたこともあったっけ。学級文庫に並ぶ類の歴史漫画はやたらと真面目で、吹きだしの中の字も多く結局「勉強」させられる感覚が強く、面白くなさは教科書とかわらなかったように記憶している。その点、昨今の歴史的題材を扱った漫画のおもしろいこと! 自由な発想に驚かされることも多い。

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映画にもなった「テルマエ・ロマエ」はローマ人を現代日本にトリップさせてお風呂好きな日本人を大いに喜ばせたが、この「信長協奏曲」はトリップ人物も、トリップ先もまったくのドメスティック。

高校生のサブローが室町時代にタイムトリップし、その容貌が酷似していることから織田信長になりかわるという突拍子もない設定だ。そのあらすじや、本物の歴史に沿うのか、いやはやフィクションにどっぷりつかるのか、最初から読者はハラハラさせられっぱなし。史実と高校生の主人公がどこまで歩み寄れるのか、あまりに有名な歴史的人物ゆえ、作者の技量があちこちで問われることになる。

サブローがなりかわった信長は思い切り高校生的発想で、周囲を「信長様はうつけになった」とどん引きさせる。政略結婚で一緒になった帰蝶は「でえと」という言葉を覚えるし、下々たちをまとめるのに「りいだぁ」を決めたり。桶狭間の戦いでは家臣に「よく食べて、よく寝といてね!」とだけ言い残し、寝てしまう。果たしてこれがどうやって、あの大勝利につながるのか、心配のあまりページをめくる手が早まる。

美濃の斉藤道三の隠された過去の素晴らしいどんでん返しも素晴らしかったし、木下藤吉郎も怪しいキャラとして登場し目が離せない。高校生的発想でどうやって「天下をとる」ようになるのか。サブローの成長を信長にぴったりマッチさせて描くところが秀逸です。

4冊あっという間に終わってしまい、もったいないほど。続きが待ち遠しい。こういう歴史漫画なら、小中学生の歴史好きへとやんわり導いてくれるに違いありません。学校の先生方、学級文庫にお勧めします! 子供から大人まで楽しめることうけあいな作品。


サブロー君、これから天下をとりにゆく人物には思えませんが

そうそう、高校生にとってはまさに「天下って何?」

侍の世界と高校生単語の組み合わせが楽しく

足利義昭のキャラは苦手なタイプ。しつこーい!! (C)石井あゆみ/小学館