話題沸騰中の『君たちはどう生きるか』。池上彰の心揺さぶられる名著解説

社会

2017/12/12

 『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎:著、羽賀翔一:マンガ/マガジンハウス)が、今話題だ。読書家たちや思春期の少年少女、さらにはその親に至るまで、幅広い層の支持を集めている。この作品が刊行されたのは今からちょうど80年前の1937年のことだ。刊行から2年後、第二次世界大戦が始まった。そんな時期の作品が今もなお読み継がれ、そして再び注目を集めている。その理由は一体どういう点にあるのだろうか。

■話題書を池上彰氏が鋭く解説

 書店や図書館には、一生かかっても読みきれないほどの本が並んでいます。いま、あなたに読んでほしい本を、そのなかから一冊だけ挙げるとしたら―。そう考えて選んだのが『君たちはどう生きるか』です。

 思春期真っ只中の中学生に向かってこう投げかけるのは、ジャーナリストの池上彰さん。その特別授業を記録した一冊『別冊NHK100分de名著 読書の学校 池上彰特別授業「君たちはどう生きるか」』(池上彰/NHK出版)をご紹介したい。

 80年間読み継がれ、さらに今年、漫画版と新装版の小説が同時出版された『君たちはどう生きるか』。もう既にどれかをお読みになられた読者も多いことだろう。この作品が時代に縛られない“本質的な人間の有り様”を描いていることは間違いないのだが、それでも細かな時代背景など理解や想像が難しい点もあるかもしれない。そんな方は、本書を解説本として活用するのが最善だろう。なにしろ、著者は“わかりやすい解説”で有名な池上彰氏なのだから。また、読後に自分なりの感想や意見を持った方は、頼もしい論客と議論するような感覚で本書を読んでみるのも有意義だろう。そしてまだこの作品を読んだことが無い人も、本書の特別授業を受け終わったときには『君たちはどう生きるか』を一度読んでみたくなることだろう。

 つまるところ、いまを生きる全ての人々にお薦めできてしまう本書。その内容を少しばかりピックアップしたい。

■貧しいと学問や芸術に接することができず、卑しくなるのか?

この作品が書かれたのは八十年前。しかし、貧困や格差が社会の大きな問題であることはいまも同じです。

 作中では、「人の偉さは貧富で決まるものではない」としながらも、「貧しい暮らしでは人間の誇りである学問を修めることも芸術を楽しむこともできない」という残酷な事実が描かれている。このことについてどう思うかと池上氏が問うと、生徒からは次のような意見が出た。

―金銭的な豊かさと心の豊かさとは別物。しかし実際には、金銭的に貧しいと心の豊かさもなかなか得られないという現実がある。
―貧しくても心の豊かさは得られるのではないか。古代の聖人君子も、有名な画家や詩人のなかにも、生前は貧しい生活を送っていた人がたくさんいる。
―お金持ちしか楽しめない芸術は、貧しい人たちの犠牲の上にある、ある種の自己満足だと思う。

 様々な視点からの意見が出たところで、池上氏はこう導く。

芸術は、どうあるべきか。あるいは、芸術をどうとらえるべきか。これは古くから議論されてきたテーマ。いわゆる芸術論です。(中略)何より大切なのは、自分の頭で考えることです。自分で考え、臆せず発言することを、これからも大切にしてほしいと思います。

『君たちはどう生きるか』は、いまを生きる私たちが様々な受難に直面したとき、それに立ち向かうためのヒント、さらには勇気をも与えてくれる作品だ。こんなにも優れた作品は骨の髄までしゃぶりつくしたい。本書で池上氏はこの作品を徹底的にわかりやすく解説し、さらには私たちが作品から得るものを実生活に適用できる段階まで引き上げるための思考法や議論の環境までも伝授してくれている。

 現在ブームを巻き起こしている『君たちはどう生きるか』。本書、『池上彰 特別授業 「君たちはどう生きるか」』と共に読むことで、その理解と活用は大幅に飛躍することだろう。

文=K(稲)