人気エンタメ作家が明かす“売れる小説”の作り方。小説を書く前に、絶対に読むべき1冊

文芸・カルチャー

2017/12/16

『エンタテインメントの作り方 売れる小説はこう書く(角川新書)』(貴志祐介/KADOKAWA)

 小説を書いてみたい!と思ったことはあるだろうか。SNSや個人ブログが普及した現代、私たちは以前よりも気軽に思い思いの文章を発信できるようになり、小説という媒体に対して“作者視点”から興味を抱く人も増えてきているのではないだろうか。自分の好きな文章を作って、興味のある人がそれを読んでくれる。もちろんそれだけでも素晴らしいことではあるのだが、“一線を画したプロの文章”を作ることができたらどれほど気分の良いものか。さらにはそれが売れて仕事になれば、申し分ないだろう。

「エンタテインメント小説の書き方には、明確なルールがある」——そう語るのは人気エンタテインメント小説家、貴志祐介氏。数々の文芸賞を受賞し、『黒い家』『悪の教典』などの映像化作品も多数生み出している。そんな人気作家が“売れる小説”の創作テクニックを余すところなく開示したレクチャー本、『エンタテインメントの作り方 売れる小説はこう書く(角川新書)』(貴志祐介/KADOKAWA)をご紹介したい。これを読めば小説の書き方が劇的に変わるかもしれない。本書は「アイデア」「プロット」「キャラクター」「文章作法」「推敲」「技巧」の全6章で構成されており、各章の中で細かな創作テクニックが明かされている。

■「もし○○が××だったら」という発想を持て——第一章「アイデア」より

 たとえば実際に作品のヒントになった事例に、こんなことがあった。何年も前のことだが、インフルエンザにかかって熱にうなされていた私は、もうろうとする頭でこんなことを妄想したのだ。
「もしも、インフルエンザ・ウイルスがもたらすものが“苦しみ”ではなく、“快楽”だったら——」

 作品のもととなるアイデアの発端は「もし○○が××だったら」というシンプルな妄想に過ぎず、そこから始まる連想ゲームのような展開によって小さなアイデアが長編小説に発展したケースも少なくないようだ。

■“一気読み”を狙った『悪の教典』——第四章「文章作法」より

 文章や文体も、小説において大切な要素だ。読者はデリケートなもので、どこか一箇所でもひっかかる点があると、途端に読み進めるスピードを落としてしまう。(中略)『悪の教典』は最初から“一気に読めるエンタテインメント”を狙っていた。そのため、できるだけ難解な表現は避け、一文一文を簡潔にまとめることを心がけていた。

 ベストセラーとなった『悪の教典』には、このようなテクニックが隠されていたのだ。「文章も自転車と同じで、スピードにのっているときほど安定性がある。」とはまさに言い得て妙。自分よがりの読みにくい文章だと、読者は安定感を失ってしまう。そうならないためにも、作者は“読者が引っかかりそうなポイント”を徹底的に排除しなければならない。

 おもしろい小説には作家の“人間”が実によく反映されている。しかしそこには、目に見えない“読者への配慮”が隠されていることを忘れてはならない。

文=K(稲)