介護を学ぶことは人生後半の義務教育! 一億総介護時代を乗り切る「ながら介護」「トモニ介護」

社会

2017/12/18

『その介護離職、おまちなさい(潮新書)』(樋口恵子/潮出版社)

 人生100年時代。こんなに寿命の長い社会の到来は、人類の歴史が始まって以来、初めてのことだ。世間では一億総活躍社会ばかりクローズアップされるが、人生100年ということは、介護を抱える人たちも増えていることを意味する。ちなみにその人数は、2010年代が5人に1人だったが、あと20年経つと5人に4人。いよいよ、一億総介護社会の幕開けだろう。そんな時代だからこそ、介護と仕事との両立に悩む人たちに対して「君、辞め給うことなかれ!」と声高らかにエールを送るのが、『その介護離職、おまちなさい(潮新書)』(樋口恵子/潮出版社)だ。

 おめでたい長寿社会は、どの世代にとっても介護リスクが高くなることを意味する。だからこそ、著者はプロローグで「進化論」を唱えたダーウィンの言葉「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」をたとえに、自己変革こそが長寿社会のキーワードだと説く。

 また著者は何かひとつのこと“ばっかり”で生きるのではなく、仕事、介護、子育て、地域参加・市民参加、学習、趣味・スポーツ、友人のように、長寿社会ではさまざまな人たちと関わりながら七色に輝く虹のように生きる「レインボー人生」を目指すことを推奨している。

 とはいえ、「老老介護」「認認介護」「介護うつ」など、暗いイメージばかりが先行しがちなのが介護の世界だ。それを乗り切るためにも、本書では「ながら介護」と「トモニ介護」を提案している。

「ながら介護」とは人生の中で介護の比重が大きい時期でも、仕事や趣味のような、自分にとって大切なものは手放さず、仕事をし“ながら”、家事や生活を楽しみ“ながら”、介護に取り組むことを目指すものだ。

「トモニ介護」は、国、自治体、企業などと共に、介護者を孤立させることなく、いろいろな人たちと一緒に介護をすることだ。本書には、2017年に施行された育児・介護休業法の概要もある。新たな介護休業制度を知るだけで、いざという時に動くこともできるだろう。

 さらに本書には、さまざまな相談事例があり、著者が国内外のケースやさまざまなデータとあわせて回答しているのも特徴だ。

 たとえば夫婦共働きで親を介護するために退職を迷っている人の場合、「働く人の“ながら介護”で、大原則は『隠さないこと』です」と介護のオープン化を推奨。介護嫁は絶滅危惧種だからこそ、まずは介護休業をとること。辞めるのは万策尽きてからでも遅くない、と言う。

 しかも、しっかり介護について勉強せよ、と一喝する。「この大介護時代に、介護に関する法制度などの情報を知らずして、介護が必要となる親を抱えることは、泳ぎ方を知らないで大河に飛び込むようなものです。高齢者である人も、親を抱える人も、ちゃんと勉強しましょう。人生後半の義務教育の必須科目です」。

 ある日突然ふりかかってくる介護は、当事者にならないと、なかなか身近に感じることはないかもしれない。だが、介護は今から準備することもできる。プロローグのコラムにある「“ながら介護”のための10原則」を読みながら、それを改めて知ることができた一冊だ。

文=富田チヤコ