あこがれの「明るい老後」は、海の彼方に。日本を離れて「第2の人生」を謳歌する人々の人生とは

暮らし

公開日:2017/12/26

『定年後の楽園の見つけ方 海外移住成功のヒント(新潮新書)』(太田尚樹/新潮社)

 定年後の人生が間近に迫っている人も、まだ先の人も、いずれは、「高齢」と向き合わねばならない。将来年金で、悠々自適に過ごせる人はともかく、特に、「非正規社員」という働き方の人たちは、十分な年金をもらえる可能性は低いのではないか。「下流老人」なんて嫌な言葉も耳にする。

 それなら発想の転換をしてみよう。生活費が驚くほど安い東南アジアで老後を過ごせば、お金の心配もなく、日本でのしがらみからも解放され、第二の人生を楽しむことができるのだ。年金は海外にいても、現地の通貨で受け取りが可能だ。

 そんな夢のような海外移住の指南をしてくれるのが、太田尚樹氏の『定年後の楽園の見つけ方 海外移住成功のヒント(新潮新書)』(新潮社)だ。日本を飛び出して南の国に移住した人々の暮らしを丁寧な取材で紹介している。終の棲家に海辺のコンドミニアムが頭をよぎったら、これは必読の書だ。

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■67歳の男性が、17歳の花嫁を迎えた

 フィリピンのボホール島のタグビラランという町に住んでいる野田さん(仮名)は、入江の向かい側の小高い丘の中腹に、小さな一軒家を借りている。家具付きの3LDKの家賃は日本円で3万5000円。街中なら、1万円ぐらいであるそうだ。生活費は、7万円かかっているが、ネグロス島の夫婦の場合、住み込みのメイドや車を含めて5万円で十分だという。

 野田さんは、デュッセルドルフやニューヨークなど9年にわたる滞在経験がそうさせたのか、大手の銀行を定年退職した後の第2の人生を南の国で過ごすことに決めた。妻は、同居している母親の面倒を見るため日本を離れられないということで、先に飛び出してきたのだ。

「単身赴任」のような形だが、掃除、洗濯は家政婦さんがいるし、食事は、毎日、マグロやタコ、イカなどの新鮮な魚介類を市場で手に入れて、自分で調理する。

 著者の太田氏は、ビールを酌み交わしながら、ここでの生活を一通り聞いてみた。

 ところが、それから2年後、再び野田さんを訪ねると、状況が一変していた。

 結局、奥さんとは、離婚することになった。すると、当時ハイスクールに通う女学生をメイドとして預かっていたのだが、今度は、その女性と結婚し、子まで授かっていた。50歳の「歳の差婚」だ。

 実は、フィリピンでは、こういうケースは珍しくなく、歳の差は問題にならないという。ただ、なかには、女性にお金をだまし取られて捨てられるということもあり、注意も必要だ。

 著書では、ほかにもいくつものケースが紹介されている。治安や医療事情、その他、場所により状況はもちろん異なる。「夢」と「リスク」、そのどちらもが混在する海外移住だが、「住めばやっぱり楽園だ」と、多くの人が語っていたという。

文=今 眞人